5月19日合評会
21:00~21:45 「夜、お話」 牧村拓
21:50~22:35 「双子姫と月の沈む方角」 崎本 智
参加者:小野寺、イコ、牧村拓、小山内 、Rain坊、カヅヤ、神崎
イコぴょん: 今日は遅れて来られる方が多いようですね
牧村拓: そうみたいですね、なのでいらっしゃる方だけでとりあえず始めましょう
イコぴょん: よろしくお願いしまーす
牧村拓: 宜しくお願いします
牧村拓: ではまず 夜、お話:牧村 拓
牧村拓: 初めに順々に簡単な感想・意見を述べていってもらいます
牧村拓: では、rain坊さんからお願いします
Rain坊: 今回は特集が童話ってことでそういう視点で見ていたので、綺麗な話なのかなと最初は思っていたのですが、けどなにか綺麗なだけじゃないお話だなというの最初におもったことです。まあ、これは他の人の作品でもそうおもったのですが。
牧村拓: では次、イコさんお願いします
イコぴょん: このお話は、Rain坊さんとは違ってちょっと「きれい」すぎる。星のひとつひとつに物語(奥行き)があるということを、母親がつたえるのはいいが親子の会話が妙にぎこちなくただ教訓ばかりが浮き上がる
イコぴょん: 「ねえ、母さん。~」「ああ、頑張りなさい~」
のくだりは、いちばん苦手な書き方で、こういう書き方を見ると、首をかしげてしまう。教訓を、話のなかに、うまく埋め込んでほしかった
牧村拓: では次にカヅヤさん
カヅヤ: 自分は、「きれいな教訓譚」として読んだので、「いい話だなー」と思いながら読んでおりました。ただ、いかんせん「いやツイ文メンバーが書いてるんだし、こう、なんか、裏があったり二重構造があったりするんじゃないか・・・!?」というフィルターというか偏見というかが邪魔をしまして、別の読み方をできないかと探ってみたのですが、やっぱり「教訓譚のいい話」という感想に行き着きました。
牧村拓: では小野寺さんお願いします
小野寺: 私は初読のとき、かみのけ座というのが本当にあることを知らなかったので、かみのけ座にまつわる話を牧村さんが創作したと思い込んですげーなと思ったのでした。ところが調べてみると本当にあり、ほとんどアレンジもされていないので少々がっかりしたのでした。かみのけ座が美しい話なので知ってる人からすると牧村版星座物語になってしまうかと思います
牧村拓: ではフリートークという形でいきますが、何か提起したい意見のある方からどうぞ
イコぴょん: みなさん、このかみのけ座の挿話を、どうとらえたのでしょうか?この作品は、3場面構成になっています・1場面:夜が怖いタケシと、語ってくれる母親の説明・2場面:かみのけ座の話・3場面:母親が伝えたいこと。おおまかにいえば、こんな感じですね。この2場面の、かみのけ座の話が、一体物語で、どう機能しているのかを考えてみることが、この作品を考える上で、重要なのだと思うのです
イコぴょん:自分なりに、この星座の挿話の意味について知恵をしぼってみました。この、しし座のかげにある目立たない星座は目立たない地味な星にも、きちんと一つの物語があることを示しているのではないか。つまり、母親の、最後の教訓につながるのではないかと思ったのです。しかし、この説明で考えると、作者は、もっともっと、相当に知恵をこらして2場面を、魅力的にすべきだと思ったのです。童話のひとつの対象である子どもに、それは伝わらないと思います。どうでしょうか?
カヅヤ: そういえば、かみのけ座の話の方が、記憶に残ってしまいますね。
Rain坊: 確かに。
イコぴょん: かみのけ座の話が、いい話だなあ、で終わるなら最初と最後は、いらなくないですか。そうじゃないから、この話はおもしろくなる余地をひめてるのだけど。
小野寺: どうしてかみのけ座の挿話が数ある星座の中から選択されているのかがいまいちわからないです
イコぴょん: 目立たない星だからじゃないですかね
神崎: つまりもっと目立たない星座もあるよねってことですか?..
イコぴょん: いや夜空の星は、目立たないものでも、きちんと物語をもっているんだよって、だからそれを人間社会と重ねて、語ってるんじゃないですかね。みんなで生きてるんだよって。
小野寺: つまり星ひとつひとつでは目立たなくて意味もないけど星座になると意味を持つとか。
カヅヤ: 王女様の愛情とか、学者の機転とか、そういうものが、「星の光」とか「たけしにはまだ分からない大人的な何か」と解釈して、あとの話と続けて読んでいました。
イコぴょん: ふむふむ、学者の機転についてですが、これ、タケシは「分かる」んですよね
カヅヤ: あ、そうですね。 じゃあ「かっこういい大人的な何か」。たけしから見て、胸のわくわくするような大人要素を聞かせた上で、母が大人になるということを話す、という流れかと。
イコぴょん: あ、それならつながりますね、胸のわくわくするような大人要素かー
神崎: なるほど。
イコぴょん: いずれにせよ、そういうことが、きちんと書けてるんだろうか、この話は。胸がいっぱいになるほど、母親が魅力的に語れているとも思えなくて……
カヅヤ: 母の語りは魅力的か判断できませんが、たけしの心理描写は面白かったです。たけしが「魅力的に感じている」っていうことはひしひしと。
小野寺: イコさんの3部構成に従うと3の部分はかみのけ座でなくてもよかったような気がします。星座一般にあてはまることで。学者の機転というのも昔のお話にはよくあるパターンに思えるのですが…
カヅヤ: 星座×オトナ で探すと、もっといろいろあるのかもしれませんね。
小野寺: そう思いますね。もっとしっくりくる話があるかもしれない
イコぴょん: うーん、かみのけ座の話って、そんなにきれいで、わくわくするかなあwっていう疑問があって、やっぱ、もっとしっくりくる話にしてほしい
牧村拓: はい、一通り出ちゃったかな?神崎さんと小山内さんにこの作品についてのざっくりとした感想と意見を頂きたいのですが大丈夫ですか?
緑川: ちょっといいですか?
牧村拓: では先に緑川さんどうぞ
緑川: 「空の見えやすい場所」ってどこなんだろう、と
イコぴょん: 山とかでしょうね。タケシと母親のバックグラウンドが、何も分からないのは、この2人も、夜空と同じような、神話的な存在にしたいからなのかと解釈しました。これはこの作品のひとつの特徴で、具体的なことを、何も語らないですよね
神崎: それはいい効果を出してる。匿名性というか。幼いころのおぼろげな思い出って雰囲気にもなるよね
小山内 豊: 王道というか、とっぴなところはないですが、大きな瑕もないと思いました。魅力的かと問われればお話の内容は無垢でいいとおもう。いま発表される作品としては素直に頷けないかもしれません。私は、この作品のどのあたりに、作者としてのテーマ「童話」にたいする思いがあるかなとそれが気になりました。
牧村拓: はい、神崎さんどうぞ
神崎: 髪の毛座の神話(?)は知らなかったです。ただイコぴょんも言った様にきれいすぎる。そんな気がします。
牧村拓: 綺麗にまとまってしまいましたね。では6さんの作品に移ります。
牧村拓: 双子姫と月の沈む方角:崎本 智
牧村拓: では逆に緑川さんからどうぞ
緑川: 「噂に負けるな!」というお話かと読みました。主人公が、童話の主人公に同調して、自分の生き方を振り返る。文章はうまいと思いました。脈絡はちょっとおぼつかなかったか。(人のこといえませんが)大人が、同調しうるようなお話だったかなという印象は持ちました
牧村拓: では神崎さんどうぞ
神崎: またこれも神話的内容です。火の靴は灰かぶりを彷彿とさせます。また、いきなり電子の部屋という突然出てきたものの異物感についてすこし話したいですね
牧村拓: はい、では小野寺さん
小野寺: 出だしは期待していましたが、途中からひどくがっかり興ざめしました。文章はいいと思いますが、これゲームなのではないかと私は童話というよりゲーム小説と思います
牧村拓: はい、では小山内さんどうぞ
小山内 豊: 主人公の抱える盗作疑惑が出だしとラストで触れられ、ほんとうなら、これが解決される、または乗り越えられる、というのがお話の筋だったんだと思う。それがゲームの話になり、別れた恋人の話になり、散漫な筋になってしまった。中東のモチーフが出だしでちりばめられたのはよかったけど、いかしきれなかったように思います。
牧村拓: はい、ではイコさん
イコぴょん:
・単純に読む面白さがある作品。
・ゲームのくだりは、とくに子どもはわくわくするんでは。
・もし子どもが読んで面白いだろうってものを童話としてよいのであれば、童話的である。
・話の教訓など、深いことを考え出すと、すごくつまらなくなる。投獄された彼女の話など、伏線が弱すぎて読者は覚えていない.
牧村拓:ではrain坊さんお願いします
Rain坊: 読者と作家(作品、物語)の一つの理想の形だな、と。主人公が童話の中の主人公に同調や学ぶことがあって一歩前進的な感じで。その他はみなさんと同じで、童話?と疑問に思うことがありました。
牧村拓: はい、ありがとうございました
牧村拓: 僕はこの作品は童話をモチーフにした小説ということでメタ的な構造を持っているものなのかなと思いました。そうするとプレイヤーとキャラクターというゲームの設定も活きてきますし。ただゲームパートがメインのように感じられましたが、その意図と効果については疑問でした。
牧村拓: ではカヅヤさんもお願いします
カヅヤ: はい。「童話」という特集ということでしたが、これは挿話が童話、という小説ですよね。この挿話だけを「童話」というように出されると、荒唐無稽な印象が強くなってしまうのですが、挿話という形をとると、アリに見えてしまう、というか素直に楽しめてしまったので、挿話という形をとったことで、童話が生きている、という意味で、この構図の効果を感じました。あと、作者自身がガンダムのイメージが…ということを呟いていた気がしたのですが、自分は漫画版ナウシカを思い出しました。
カヅヤ: 以上です。
牧村拓:ではフリートークをお願いします。
小山内 豊: 挿話の部分が主人公の境遇、問題の部分を掬い上げられているかというと、たぶんできていない。これは書いてみるとわかるんですが、すごく難しい。わたしも前の作品であいまいになってしまいました。童話ということはとりあえず置いておいて。
緑川: 先ほど、イコさんが言われたことと被るのかな
イコぴょん: ですね、自分はそこ考え出すと、散漫で、ぜんぜんおもしろくなくなってしまうように思うんですね
小山内 豊: 主人公が、パキッと生きかたを変えようと思うくらいの影響を読書から得るには、それ相応の心理状態になければ説得力が弱い。
小野寺: 文章を変えてみるという手もあるのでは、と思いました
イコぴょん: 読む面白さがあったという一点において、自分は評価したいのですけれど、作者がもしこの挿話を主人公にとって意味のあるものとしたかったのであれば、やり方は考えるべきですね。投獄された彼女の話とか、ぞんざいすぎですよね
小山内 豊: 小野寺さんのおっしゃったとおり、序盤のわくわく感はかなりあったから、そのギャップで厳しくなるのかも。あれは後付感がすごい>イコさん
緑川: >彼女は塀の中で何をしているのだろうか。というのが、なんか他人事みたいで・・・
イコぴょん: 序盤で二行しか語られてないですからね
カヅヤ: 子供向けの漫画でなら、「読者が本の中に入ってしまって…!!」みたいな流れで、主人公の心理変化がはっきり書かれそうな設定に感じました。設定だけ見ると。
緑川: あぁ、なるほど >カヅヤさん
小山内 豊: それがラストは、盗作なんかどうでもよくて、となっちゃう。
野寺: 語り手が途中からゲームを始め読者を忘れてゲームに熱中してる感があった
イコぴょん: ゲームのおかげで、火の靴とかも、完全にどうでもよくなったのは、自分だけでしょうか?
神崎: 盗作という下手したら投獄の可能性ある事と実際に塀の中の彼女の対比かなと思いましたが
緑川: うーん、盗作→投獄、になっちゃうのかな
神崎: しかしうまく働いてないような
イコぴょん: 対比は考えなかったなあ
緑川: 盗作疑惑っていう噂、と、作中で描かれている噂が、噂に思い悩む主人公と、噂を信じない挿話中の主人公の対比かなと思って、そこが、この作品のキモなのかなと
小山内 豊: そういう筋は想定できます。細いけど。
イコぴょん: 細いですね
緑川: んー、さっきイコさんが言われた散漫ってのはありますね
小山内 豊: 主人公の心に残ったのは「私は冒険する男の子が好きなの」というセリフなのだけど、それもまた、どこに作用しているのか、解釈が難しかった。
イコぴょん: 解釈は、なんとかできるけど、ぜんぶこじつけみたいに思えてしまって自分は、解釈をすることをあきらめました
緑川: 例えば、主人公は獄中のサラと連絡さえ取ってない。なんか、詠嘆調にやり過ごしている感があります。そんな主人公と、挿話の主人公の対比、を読むべきなのかなと
小野寺: 私は王国の設定はなかなか読ませると思うのですよ。
イコぴょん: 果敢に難敵に挑む男の子と、詠嘆する実際のドニーと。
小野寺: たとえば、嘘をついて火の靴を穿かされ、踊り続けている罪人たち。電子がでてきておかしくなった
イコぴょん: 硝子盤に、「You clear!」はひどくないですか?w
緑川: そして、現実のドニーの物語はこれから始まるで、小説も終わってしまう
小山内 豊: 書くのは楽しかったのだろうな、と
緑川: 読むのも楽しかったですよ。なんか、本筋から逸れまくりって印象もありましたけど
イコぴょん: 書き手の熱中は伝わってきましたね。自分も読み手として楽しく読みました。
ああ、これなら、何も考えず子どもも楽しく読むだろうと思いました
Rain坊: このゲーム、シューティングですか? どちらかというとサバイバルゲームのような感じがしたんですが。
緑川: アクション系ですよね
小山内 豊: 「私は冒険する男の子が好きなの」というのは、現実の主人公に、なんというか大海に踊りだすことを勧めている、か、動機付けている。それをしているのは、挿話の主人公でなく月の女神なんですね。そうした複雑な構造が、読み取りにくくしているのもあるんでしょう。
イコぴょん: アクションゲームっぽいと思った>Rain坊さん
緑川: 挿話の主人公が主体的にというより、女神に促されてるってことなのかな
イコぴょん: やっぱ女性に言ってもらいたいんじゃないでしょうか、男の子としては
小山内 豊: うん。女神が主人公に働きかけている。で、その内容は、盗作ではなく、投獄中の彼女の方へ向かわせている。
小野寺: 私は6さんの繰り出す設定に少々弱い面がありまして、つい楽しんでしまう
イコぴょん: ネットで調べまくっているらしいですからね。文学的な設定や、難しい言葉のオンパレードに、ついくらっときてしまいますね>小野寺さん
緑川: たしかに、それはありますね。小さくまとめようとしてないし。アル=アズハル大学、って私、最初、シャレだと思った。 調べてみると、本当にあるんですね
小野寺: そういう設定面からみていくと投獄された彼女や盗作問題というのは比重が軽く思えます
小山内 豊: 盗作と、彼女の問題、どちらかにすべきだったのかもしれない。それから、散漫なところが、ゲームやアニメでなく、エジプトの景色や生活に向けられていたら、引き締まっていただろうと思う。
緑川: なるほど >小野寺さん
イコぴょん: 軽いですよね。小山内さんのおっしゃるように、もっと現実パートの問題をしぼって、かつひとつを重たくし、挿話も、エジプトの生活に向けていれば、引き締まったでしょうね、ただゲームがあるからこそ、童話として、子どもに楽しくなると思います
小山内 豊: 入れ子構造で意味を掬い取っていくのは、とても難しい。
イコぴょん: 入れ子は必要なかった気もするなー。「冒険する男の子」ってだけで、読者(子ども)はそれぞれに意味を受け取るでしょう
カヅヤ: 「大人向け童話」ないし「童話を扱った小説」という認識で読んでいたのですが、「子どもに楽しくある」ということは、あの作品で重要なのか、という疑問があります。
イコさんのお話が「子供向け童話」という前提に見えたので
イコぴょん: はい、自分はそういう前提で喋っています。
小山内 豊: 大人向け童話としてもどうだろうか、この作品は率直に言って、童話ではないと思うんです。
緑川: 大人向けと子供向けが、ちぐはぐな印象なのかな >カヅヤさん
イコぴょん: 大人向け童話であれば、余計ゲームはいらなくなるなと思います
カヅヤ: 童話ではなくて「童話を扱った小説」という認識でした。
イコぴょん: 童話と、それ以外が、パキッと分かれていなくていまひとつ、そう思えないのです。最初にあったとおり、文体だけでも変わっていればよかった
牧村拓: では盛り上がってきたところですが、ここで会自体は一旦〆させていただきます
一同:お疲れ様でした!