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『Li-tweet』(2014 春号)創作合評その2

 

緑川「藍よりも青く」(小)

常磐「あたしの世界」(小)61

彩「SNOW DANCE」(小)7

 

 

 

 

ふかまち: 緑川「藍よりも青く」(小説)

 

misty: ○緑川「藍よりも青く」の感想

何と言えば良いのか、とにかくあっさりと読めすぎたことに関してとても疑義を感じてしまう。あっさりのものならそれはそれで何かしらの楽しみ、例えば極例を言えばラノベの代表作、谷川流の『涼宮ハルヒ』シリーズでも、幾つかの主題がある。

しかし「藍より青し」には序盤の物語とはいえ、伝わってくるものがない。日記のようなのである。

また繰り返し読んでみたら印象も変わるかもしれないが、いちおう一回目の感想として、これを残しておきます。 で、これ以降、少しだけ思うことが合ったので、流れの中で述べます。

 

ふかまち: 『藍よりも青く』詩的な雰囲気の漂う静かな作品できれいに整頓されていていいなと思ったけれど、体液とか全裸という単語がしっくり来ないと言うか卑猥と言うか、この作品のかもし出す雰囲気にうまくなじんでないからこそやけに生々しくひびいてしまって残念だと思いました。レースのカーテンを買おうと思った。もっとちゃんとしようと思った。というところが細かくていいなって思いました。主婦パートさんがうたうところはひとまとめにしたほうがいいかなって思ったんですが、小説にはこういう方法もあるのかな、主婦パートさんがうたうところはなんだかおもしろかったです。

 

misty: ふかまちさんはやはりそういう指摘をするんだなあ(笑)

 

日居月諸: これは私小説めいたものなんでしょうか。緑川さんは転勤が多いと聞いているので。もし私小説じゃなかったとしたら、小説全体もだまし絵のようなもので、あえて露悪的に書いているのか。ちょっと受け取り方に困る作品でした。

 

る・: これまでとは違った文体で書かれているように思います。作中主語のひとりごとを織り交ぜた文体、人によるかもしれないけど、わたしには好ましく感じました。もちろんもっと洗練することはできるとは思いますが。野球でたとえると岩隈のストレートです。

 

ふかまち: どんなところが露悪的と感じました?>日居さん

 

小野寺: やや平板な感じがしました。連載なのでこれからストーリーが複雑になるのかもし

れませんが、物足りなさもあります。

 

P: 別に比べるいわれはないですけど6さんのアンファンテリブルの時にも思ったんですけど、断章形式となると、小説の流れの不即不離というかそんな感じを期待してしまうのですが、章ごとのつながりが強く、これだと通常の小説のような区切り方でもいいのではないかと思ってしまいました。

 

日居月諸: セックスしてるシーンが、妙に幼稚だな、と。以前虫が交尾するシーンを書いていらっしゃったけれど、その時はもっと繊細に書いていましたので。

 

ふかまち: なるほど

 

日居月諸: そういった点では、抑制をあえて効かせていないと見えます。転勤のシーンも流れに任せるだけだし、家の事に気を配る様子もない、と自己紹介している。ある意味、この主人公には相応しいセックスシーンだと思う

 

misty: やはり大事なのは冒頭のシーンだと思うんですね、そこで、主人公の現前の世界に対する意識のぼやけが、どれくらいぼやけているのか「たゆたうとか、」が、もっともっと書けると思いました。この、なんとなく蒸し暑い部屋の中で性交することの感覚は分かるんです。でもそれをもっと突き詰めて書けたと思う。

 

: セックスシーンについてみなさんやはり書いてますね。でも淡白なところが逆にいまどきっぽいんじゃないんですかね。

 

日居月諸: 極端な話イチャイチャを見せつけられても読者としてはどういう反応をすればいいかわからないんですよね。ただでさえ町中でイチャイチャするカップルは目を背けたくなるし。そこで普通の小説なら少しでも見れるものにしようとあれこれ工夫する。ただ、この小説は淡々と叙述を重ねていく

 

misty: うん。

 

る・: 文章の区切り方は川端の『山の音』を思い出したかな、特にクライマックスがなくても、丹念に区切っていく感じ、Pさんとは違って私は小気味よく読みましたけど。 セックスシーンもそんなには気にならなったかなぁ。強いて言うなら「もっとめちゃくにして」なんて言わないだろう、と、なんかAVぽい。 

 

: でも序章なんじゃないかな。続くみたいだし。この淡々としたやりとりでは終わらない、もっと深く付き合う人がこれから出てくるのかも。

 

日居月諸: 「ふだんは全然気にならない、自分の指の節々や、腕の筋肉がごつごつした感じを意識する。」ここで自己への言及がある。普通の小説ならこれから自意識をえぐりだすんですけれど

「それにしても、二時間三千九百円の自由、どこからも横槍の入らない部屋はまた、なんて俗っぽい空間なんだろうと思う。」

こうやって外側へ目が向いちゃう。

 

misty: 僕はるさんとは違って、なんというか、冒頭のシーンを読んで、それで読むのを止めてもいいと思いました。実際やめましたし。何というか、別にこの書き方が面白いとはとても思えなかった。  洗練されていないだけなのかもしれないけど・・・ 分からない。

 

: 淡々としてますね。客観的というか、セックスシーンを書くけど、溺れきれない。それを外側からみてる自分、というか。

 

ふかまち: わかります>彩さん   その淡々とした感じが読み手にとってここちいいかどうか分かれちゃいますね

 

日居月諸: いや、客観的ではないかな。徹底的に主観だと思います。反省が無く、ただただ流れに身を任せるだけ

 

ふかまち: 主観ですか

 

日居月諸: <<< 徹底的に主観だと思います。反省が無く、ただただ流れに身を任せるだけ

 

misty: おぉ、これは面白い。

 

: あたしは客観だと思いました。「じっとその揺らぎを観察する」とかありません?あと、小題がついてますよね。これ、いらないかもなぁ、と思ったんですよね。ないほうがずらっと読める。

 

misty: 彩さん> 僕もこみだしは余計だと思いました。なくていい。数字番号でもいい。

 

misty: 自分でにっきょさんのコメントを面白いと言ったのですが、それでは僕のコメントの「日記のようだ」と同じで、結局これ日記になってませんか? 普通の人が書く文学的でない日記。

 

ふかまち: 小題は雰囲気作りになっていていいなとわたしはおもったんですが、どうなんでしょう

 

日居月諸: メモみたいなものかな。日記は思い出しながら書くけれど、メモはその場その場だから

 

misty: メモか・・・ ツイッターのようなものか。

 

: 最後に50台の支店長が出てきますよね。この人のキャラクターがいいと思ったんですよね。あと、そのセリフにユニコーンの歌詞が被る。でも、この歌の部分がなぜか会話のかぎかっこと同じようにかぎかっこにされてて、うーん、もったいないかな、と。

 

misty: るさんのように川端まで援用する必要があるのかどうか。分かりません。うーん。川端的なのかもしれないけど・・・ 大胆にメモ書きでしょう。

 

: 小題は、あたしの感覚なのですが、比較的長い文章に対して、つくのかな、と思ってたんです。この文章だと、小題に対してその中身の文章が少ないから、この小題がつくことで、文章の読み方が限定されるというか、色をつけられてしまうような気がしたんです。

 

 

misty: それ、分かります。

 

日居月諸: ユニコーンで思い出したけれど

「選曲は、ただたんにそれらしく、別に迷惑とかそんな事を感じてるわけじゃなくて役割を演じてみただけで。」

こういう叙述がありますけれど、徹底してこんな感じですね。外側に類型があって、それをなぞっている感じ

 

: 役割を演じる自分、恋人である自分、仕事をする自分、みたいなことかな。だとしたらかなり目的は達成されてるんじゃ

 

日居月諸: 洗濯機とか冷蔵庫とか恋人とか役職とか、普通なら必要とするんだろうけれど、まあ僕にとってはいらないし、手に入れられて楽になるならまあそれでいいか、と言った具合に生活してるのかもしれない、この主人公は。

 

: 客観的か主観的かという意見の違いが面白かったです。ものごとをたんたんと描写していくことには、客観的なものを感じるんですがそれはこの主人公が何物にも執着をしないところに、客観的なものがやどるんじゃないかとおもいました。それでいて、自らの世界(主観)をきっちりと線引きしているように読めました。

 

ふかまち: 日居さんこの主人公に恨みでもあるんでしょうかとつっこみたくなる

冗談ですが

 

日居月諸: さっきの主観、客観の話に戻れば、何もかもが他人事のように感じられて、客観に見えるんでしょう。ただ、役割を演じてるだけだから、初めから全部他人事なんですよね。だから、普通の人にとっての客観が、彼にとっての主観ではないかと思う

 

misty: (あるんじゃ笑 僕自身も、この主人公に対して若干イライラしてそれが読解の妨げになってたことは否めません笑)

 

: そうですね。割といるんじゃないかな、こういうタイプの子。で、もてちゃう。

 

: なるほど。。

 

日居月諸: 同族嫌悪かもよ>ふかまちさん

 

小野寺: うーん、自分たちのリアルな人にはわりに普通な人かな。なんだかんだ言って仕事第一みたいな。

 

: 冒頭からこの主人公の性格を叙述する言葉が流れていて、それがぴったりとその後の主人公の動向(集中できなくてよそ事を考えてしまうところ)に重なり、それは成功をしているのではないかと思いました。文章にも緊張と緩和があって、いいかもと思ったのですが、一方で主人公の性格をこの短い文章でここまで描いてしまうところに過剰なところを感じました。あと、この主人公の気質をその後どうやって、小説のながれとマッチさせていくのか・・・その方法は難しいものではないかと思いました。

 

misty: うーん僕はこの小説に対して否定的な目線しかないみたいです。

 

: たしかに主人公としては難しいラインですよね。もっと分かりやすい方が絶対動かしやすいはずです。次回、どうなっちゃうのか期待…

 

る・: 独白みたいな文章ですよね

 

misty: そうそう

 

ふかまち: 主人公の動向(集中できなくてよそ事を考えてしまうところ)に重なり~一方で主人公の性格をこの短い文章でここまで描いてしまうところに過剰なところを感じました。6さんのこの意見がスコッときました。なるほどそうだなって。

 

: きっとこの主人公が変わっていくと思うんですよね。表面的にはそんなに変わらないけど内面的に。でもそれってまさに小説の醍醐味のような気がします。なんたって小さな話、です。

 

: この短いスパンではやりすぎではないかと思ったんです。もっと100枚なら100枚の中で非常に効果的な場面でその気質を見せてもよかったんじゃと思いました。

 

ふかまち: 続きがたのしみですね

 

小野寺: あ、それうまくいったらおもしろいっ

 

る・: 普通だったら独白的な文章って、身の回りにある社会だとか世間とか、そういうものから乖離していく思考を描くもんだと思うんですよね。けれどこの文章だと、独白までもが社会的というか、些細なことで。そういう意味では物足りなさを感じたかなぁ。 主人公に魅力があるかっていわれるとそうでもないけど、こういう主人公を走らせてどうなるか、ってのも気になるっちゃ気になるかな

 

緑川: ともあれ、書きづらいやり方で始めてしまったなと、改めて実感中です

 

misty: また修正を加えつつのやり方でいいじゃないですか!

 

緑川: どこまで押し通せるか、変えていくのか、自分でも未知ですけど

 

る・: 結構ノッって書かれてるのかなと想像したんですが、そうでもないんですかね

 

ふかまち: るさんのコメントや彩さんのコメントにヒントがあるように感じました(わたしが言うなってかんじですが)

 

緑川: ほんとに乗ってる時は先まで見通せるんですけどね

 

緑川: 今回は、そうではないですね

 

緑川: ところどころ、部分的に乗る、という感じです

 

: この合評が何かのヒントになればいいですね!

 

緑川: はい。なりましたよ

 

============

 

ふかまち: 常磐「あたしの世界」(小説)の合評をはじめます。感想を用意してる方は貼り付けおねがいします

 

ふかまち: 科白以外の部分では読むことができるんですが、科白の部分になると作品に出てくる人物のテンションについていけなくてその部分だけが残念だなと思いました

 

misty: 全体としては、ポップなエンドだし、悪くないと思いました。ただ、3点。1、時間軸のブレがあってそれが読みにくい。2、はなし言葉が読みにくいのがある。全部仮名文字の部分。3、「あたしの世界」というテーマについて。それは流れの中で述べます。

 

: テンション、分かりますね。ちょっと無理してない? 笑 ってかんじが。

 

P: 前よりは読みやすく思いました、視点のブレはそんなになかったので

 

: まず冒頭がどういう意味なのかまったくわからなかった。しかしそのあとの物語展開においては、ちゃんとしたものがあったと思います。おばあちゃんの使い方とか、もう一度髪飾りを探す展開とか、ラストにおいても形をつくれていたと思いました。

 

日居月諸: 正直に言えば、畑が違うなと思いました。なんと感想を言えばいいのかわからない。個人的な意見を述べたら多分的外れになるでしょう。それくらい、関心の向かう方向が違うと思いました。完成されているとは思います、私が興味のあるところとは別のジャンルで。だからこそ、なんとも言えません。

 

緑川: いつもの常磐さんらしい作品だと思いました。ただ、たしかにバージョンアップされてるとも

 

: 見てみろ。和真。 あたしの耳に入る熊みたいなあいつの言葉。その、和真の体をつまみ上げてしまうくらいの太い指が向いた先の建物は、まるで幼稚園か何か、子ども向けの建物のようだと、全てが終わった後、お父さんが私に抱えられるサイズになってしまった後に思った。・・・これってどういうことなんだろう。

 

緑川: 冒頭もそうなんですけど、場面が分かりづらいのも、そうかなと

 

P: クロニクル全体からの位置付けは、忘れてしまってわかりませんでした

 

P: 似た名前の人がいたなというくらい…

 

小野寺: これまでの常磐作品のなかでは読みやすく解りやすいもので良かったです。ことさら苦労を語っていない点。ただ今までの作中人物がいきなり現れるのはちょっと気になる。

 

緑川: ちょっと抽象的な言い方をすれば、作者ご自身と語り手のわたしとの距離感がどれだけ保てているのかと

 

misty: にっきょさんのおっしゃった意味で言うと、私は例えばこれを読みつつ森絵都を思いだして、そして森絵都ってすごいんだなって改めて思ったので、その流れで私は述べていきたいと思います。

 

緑川: もう少し場面全体とか見渡すように書かれては如何かなと思いました

 

P: 冒頭は、最初僕もわからず、先を読めば分かるのかなと思ってて、「熊」といわれる人のことがわかるだけだった

 

: お父さんが私に抱えられるサイズになったっていうのがつかめない。

 

緑川: 作者の頭の中では分かっているんだけど、

 

る・: まず、幼稚園の女の子の話を書こうと思い立ったことを、それを書ききったことを賞賛したいです、普通書こうと思わないでしょう。 ちょっと問題があるなと思ったのは、人称代名詞がいささか読みにくい、前の文章のかかわりとは関係なく「あいつ」とか出てきてちょっとためらう。 あと台詞も誰が言ったものかよくわからない、状況がわからない、というのはありました。 加えて、もし自分だったら「おばあちゃんがリボンを見つけて埋めといた」ってのは説明しなくても状況でわかるから書かないかなぁと。 なんにせよまったく異質な世界を描けるのってすごいなぁ、と。野球でたとえると前田のカーブです。

 

緑川: それが読者に上手く伝わってないということは、やはり距離感の問題かと

 

: 「おばあちゃんが埋めておいた」のは書かない方がよかった。僕もそう思いました。書かない方が読者にいろいろ考えさせる部分があって楽しいです。

 

緑川: 6さんの言われる物語展開とか、そこは私も評価したい。こういう姿勢は良いと思います。

 

misty: 私は内容面について言及しますが、これは要するに今までの自分の世界を振り返った、その時過去と現在をつなぐものとして、幼馴染への愛というもが在った、それを発見した、というのでオシマイになっているのだけど、それならば「あたしの世界だった」となるわけで、これは現在を書くまさにその時に終わっているのですね。まぁだから続きものとして読んでもいいんですが、もう少し、幼馴染への気持ちを深く書くなり、そういうのが無いと、弱いと思いました。

 

 

小野寺 ただ今までの作中人物がいきなり現れるのはちょっと気になる。これかなぁ。わかりにくくしてるのは。

 

: そうかもしれない。でも他にも要因はあると思う。スターシステムを使うことに文句はないのですがその作品が単体としても楽しめるように最低限のわかりやすさは確保してほしかったです。

 

: なるほど。あたしは出てくる子たちが基本いい子で素直で関心しました。思春期の自分を思い返すと、自意識過剰すぎてこんな健全じゃなかった。

 

P: 子供の意識の持ち方についても一考あるべきですね

 

緑川: 常磐さんの他の作品でもそうですよ、最後の後味の良さげなところも >あやさん

 

: 僕も基本的には集中して読めて、ええどうなっちゃんだ!って中盤後半はかなりハラハラしました。セリフのわかりにくさは僕はなかったです。

 

P: 琴美がちょっと分かりがよすぎる

 

日居月諸: 非常に無垢だと思います。常磐さんの書く子供たちの世界って

 

小野寺: ウンウン、わかります緑川さん

 

misty: イノセントワールド

 

: 分かります。こんなにいい子じゃなかった。子供ながらにずるいことっていっぱいありますよね。

 

P: 話の展開自体は割と読まされてしまいました

 

misty: まぁしかし・・・うん。森絵都さんの作品の中にもこのようなのはたくさんありますが、彼女はこれに加えてドラマ展開がものすごいから、ただ無垢なものを書くだけだと、弱いと、私は言いたいですね。

 

日居月諸: そう言う点でシャットアウトされてるのを感じます。自足してるから、ちょっと手を出しただけでこちらが間違ってるような感覚を受ける。その辺がとても無邪気ですね。邪な気持ちなしで、撥ねつけているという意味で。

 

日居月諸: ある意味現実の子供に接する時に覚える気遅れに似てる

 

: ちょっと手をだすというのはこの子供たちについて何か言うとって意味ですか?

 

日居月諸: 作品全体について、かな

 

日居月諸: いい話だからね、普通に

 

: ああ、なるほど。

 

小野寺: すみません、しばらく席をはずしてます

 

: 幼稚園の話はともかく、中学生の受験前でこのノー天気さはちょっとないだろう、と。太宰とか読んでたせいであたしがひねくれてる? 笑

: 僕は受験前でもこんな感じな印象を持ちます。

 

: 意外と自分自身のことは深く考えない年代かなぁって。

 

ふかまち: 大人が無垢なこどもをかくとこうなるんだなあという感じで、こうあってほしいみたいなものもあるのかな、ほんとうに無垢な子はもうちょっと馬鹿だと思う

 

: 無垢だと僕も思うんだけど、でも常磐さんて今作品に限らず嫉妬とか怒りとか負の感情も書いていると思うんですよね。だから無垢性が際立つのかもしれないけど。

 

日居月諸: でも最終的にはハッピーエンドでしょう。小難しい事言えば止揚されるんですよ

 

: ハッピーエンドですね。

 

: 最終的にはハッピーエンド、というか、最初からずっと基本ハッピーじゃないでしょうか? いいなぁ、羨ましい。

 

日居月諸: ヘーゲル的に言えばアウフヘーベン。嫉妬や怒りといった負の感情、あるいは個別的なものは否定的なものに過ぎず、すべては絶対精神のためにささげられる生贄のようなものである

 

緑川: まあ、個人的な感想になるかもですけど、常磐さんの場合は、この持ち味は、差し当たりこの方向性で行かれた良いと思う。その上で、細かな部分や場面の描き方をもっと工夫されてもらえればと

 

: 常磐さんという書き手は、固有性と一般性を両方持っている書き手だと思うんです、その両立が惜しいところがあって今回はわかりづらい場面もありましたが、一般的な感性に寄り添いすぎてしまったところもあると思う。もちろんそういう部分は大事だけど常磐誠の小説の中でしか読めないよね!この感覚というのももちろん大事にしてほしいと思います。それをがんばって探してほしい。ただ一般的な感覚は開いたままで。

 

misty: いい年を重ねてしまった私たちが小難しいことを呟くよりは、この小説はもっと幼い読者の為に書かれているのではないでしょうか、端的に。僕はそう思います。

 

日居月諸: 少年時代ってどうしても憧憬を預けながら語っちゃいますよね。でも、それで覆い隠されるものがある。子供の実態とかもそうだけど、大人が現在置かれている状況を忘れられる効果がある。それって一瞬ですよね。でも、子供にとってはその幻想が長く流布され続けるんですよ

 

: なんとなく言わんとしていることは分かります。子供側もこんなイノセントな印象で見られたらつらいだろうなぁ。

 

: 長く流布されるっていうのはどういう?

 

日居月諸: 要するに少年ってのは無垢であるべきだ、ってのが常識のように語られちゃうわけです

 

: ああ、なるほど、そういうことか。

 

misty: 学校における規律訓練装置

 

misty: (フーコー)を思い浮かべますね。

 

: それを踏まえたうえで「かける、少年少女」を書いてほしい、、ってことですね。わかります!

 

misty: わかります!2

 

る・: コクトー(恐るべき子供たち)かケストナーか、っていったら、ケストナー側ですよね。ケストナーの小説のまだまとまりきっていない萌芽のようなものは感じる。

 

================

 

ふかまち: では彩「SNOW DANCE」(小説)の合評をはじめます

 

: お願いします!

 

ふかまち: SNOW DANCE不思議なはなしだと思いました。語り手の性別などがぼんやりとしたまますすんでいくけれどそれは最後の「あなたは誰のふりをするつもり?」や「あなたが女の子だってこと、本当はちゃんと知ってるわ」の台詞を際立たせるためだったのかなとおもうとしっくりきて、どきっとしました。一番きれいだとおもったのはペンダントにかかれた少女の部分、少女の絵を見ながら書いてるみたいな感じで、読んでいてペンダントが簡単に想像できたのですごいなって思いました。ほんとに不思議な作品で楽しかったです。

 

日居月諸: これも冒頭の所と、それから女性二人の書き分けがうまく行っていないように感じられました。それ以外は、書ける人だとわかりました。ゆえに、もっと展開のあるものを読みたい

 

misty: きれいな小説だなと思いました。悪く言えばありそうな小説だな、て思いました。きれいなものを並べたらきれいな文章になるというか、「香水」とか「時計」とかを並べたらきれいになるよなっていう。 場所が明確でないのはいいかもしれません。 なんか漫画の「NANA」で、母に捨てられる主人公ナナのシーンを思い浮かべました(分かりにくいイメージですいません)

 

: 世界観の構築がしっかりできていると思いました。部屋の雰囲気とか時々の主人公の心理描写などがしぐさや小道具を交えながら表現されているのがよかったと思いました。この小説のなかにも登場してきますが、主人公のもっとこの小説に表現されていない部分がもっと匂えばいいのではと思った。過去とか出身とか。そういったものが表現されていたとしても点的になってしまっていて、もっと別平面に登場人物のことを立たせた上でそれらが線でつながるようにすればこの作品が短い作品ではなくて長編小説のある部分の切り取りになれたのではないかと思う。

 

る・: 雪の振る闇夜のなかをカンテラひとつで歩くような、そんな小説。 ちょっと気になることがあるのですが、冒頭部分、部屋の描写をしていますが、それぞれのオブジェクトを全て並列に語っている、という印象を持ちました。 なんかうまくいえないけど、一枚の絵を説明する時、フォーカスはまず一番目立つところにいきますよね、かえってここの描写は全て等質なものを羅列しているのが気になったかな。野球でたとえると、山本昌のスクリュー。

 

misty: (なぜ全部投球で例えるんだろう笑)

 

小野寺: 作品と書き手の距離感が一定していて読みやすくはあったんですが内容が掴みきれないもどかしさも感じました。

 

: >にっきょさん。あまり自分の作品が評されてるところでは発言しない方がいいのかな、と思ったのですが、2人の女性を同じようなタイプにしたかった部分があります。子供の女の子が大きくなったらこうなるだろうな、というラインで書きました。

 

日居月諸: ああ、憧れの対象として統一して見てると

 

: >るさん。「それぞれのオブジェクトを全て並列に語っている、という印象を持ちました。 なんかうまくいえないけど、一枚の絵を説明する時、フォーカスはまず一番目立つところにいきますよね、かえってここの描写は全て等質なものを羅列しているのが気になったかな。」このコメントは嬉しいです。何というか、ステンドグラスみたいな描写をしたかった。細かく見ると分かるけど、何の絵かイマイチ分からない、みたいな。

: >にっきょさん。というか、似たような境遇の女性、としたかったんですよね。

 

る・: ステンドグラスって細かく見るとわからないんじゃ。

 

: あれ? そうかな? モザイク画? みたいな。

 

緑川: この作品は少女の回想ですか?

 

: そうですね。「記憶の中で~」という一文が入ってます。

 

 

る・: あと、内容はよくわからなかったんですよね、誰か分かった人いるかしら。

 

misty: 分からなくてもいい感じがあったのでよしとしました。

 

: >るさん。最高にうれしい。ずっと悩んでいてください。笑

 

: 目で、いいの、と訊いた。女は私のコートのフードを頭にかぶせた。彼女の冷たい手が私の頬をかすった。・・・この部分がよくわからなかった。

 

: 今朝、私の襟足を通ったばかりのハサミの冷たい感触が思い出された。・・・あとこれかな。

 

小野寺: わたしもわからないから何度も繰り返し読みます!

 

日居月諸: 二つともそのままじゃないですか

 

ふかまち: 読み手に掴まれるのを拒んでいるような作風だなっておもいましたとてもよいです

 

: お、そうなんですか。

 

緑川: あんまり回想らしくなかったので、(少女の目を通した描写のようには思えなくて)最初、主人公が大人かと思ってました

 

: あ、はさみは分かった!散髪したってことか。

 

: 最初から説明するとですね。まず、主人公は女の子ですが、普通の家庭では育っていません。おそらく孤児。そして、よく知らない女に変な店に連れてこられています。

 

日居月諸: うん、そこはわかる

 

: そして、その女は店の奥で誰かと話をしています。そしてそれを主人公の子は嫌な気分で感じている(書きました)。そして、ある女性に会う。そこでその女性はペンダントを見せます。

 

日居月諸: 店に引っ張ってきたのが「香水女」で、後の人は普通に「女」と書かれる人でね

 

P: 逐語的な場面はわかるのですが……

 

P: 一つ気になるのは絵画の王女の云々というのは元ネタがあるのかどうか

 

: 狂人の話をして、朝ハサミを当てた襟足(つまり長い髪を切っている)を書いて、「あなたが女の子だってこと~」と続きます。つまり逃げなさい。じゃないと男の子フリをさせられて狂人のところに連れていかれるわよ、としたかった。どうでしょう?

 

: >Pさん。あります。ナポリだったかな。ちなみにチェスタトンの引用も入ってます。

 

日居月諸: まあ、大筋はわかるんです。ただ、細かな表現の所が、惻隠の情のごとく書かれてるから分かりにくいんだと思います。その辺は表現方法だから、なんともしがたいけれど

 

る・: ああ。女の子だってこと、ってそういう意味か

 

日居月諸: 女の子は男の子のフリをしなければならないくらい難しい環境に置かれてるし、その上に回想が重なるから、自ずと表現はややこしくなる

 

: ですね。そして彼女はとりあえず逃げ切った。だから回想できている。そこを間接的に表したくて回想にしました。下手ですね

 

日居月諸: 繰り返し読むのに耐える分量だし、文章だから、私はそんなに気にならんかったけれど

 

misty: まぁ普通は繰り返し読みませんがね。

 

ふかまち: もうすこし枚数を増やせば綾さんの種明かししたことが読む人に見えてきたかもしれませんね。でもこのままでも謎が謎を呼ぶ感じでいいとわたしは思いました

 

misty: そうですね。分からないなりに成立していると思いますよ。

 

: 彩さんはこういう方向を目指されるのですか。

 

: 自分の中だけの話なのですが、これはちょっと「わたしを離さないで」を参考にしました。かわいい女の子を育てる孤児院みたいなところがあって、金持ちの老人のおもちゃにされる目的で育てられる。そして、逃がしてくれた女の人は実は自分も同じ境遇だった。で、逃げなさい、みたいな。

 

misty: そうですか。

 

: >6さん。こういう方向とは…? 幻想小説? みたいな感じでしょうか。

 

  misty: カズオ・イシグロ的な、ということでしょうかね。

 

: 僕は山尾悠子みたいなものを感じて、こういう抽象的な時間と場所の物語を書いていきたいのかなあと思いました。

 

: 山尾悠子! 嬉しいです。 意識しました。くるぶしにも及ばない。

 

: イシグロ的な叙述トリックがしたい人じゃなくて文章を重ねたい人なのかなと思いました。

 

: うん。そうですね。あの硬質のある文章にはすごく惹かれます。でも文章だけではああいう風にひっぱれない。やっぱり背景を考えますよね。

 

: あと、この題材は結構昔から好きでよく考えます。本当は女の子だけど男の子としてそだてられる。それってすごく大変だし、つらいと思うんです。でも、風習として昔はありましたよね? 男の子を女の子として育てたり(田舎とか)。そこで生まれるひずみ、というか、絶対そんなことされたらまともには成長できない。そこを描ければ面白いですね。

 

: なるほど、設定的にも趣味の世界だったんですね。道具的に使ったというわけではなくて・・・。

 

: 話はずれますがとーいさんの小説を思い出しました。

 

る・: ああ

 

: 昔読ませてもらったあの雑貨屋さんの小説。

 

: これは初めての小説ですか。

: ちゃんと通して書いたのはあんまりありません。この作品も抜粋みたいですよね。長いの、書けないんですよ、時間的に。あと、飽きちゃって。

 

: あ、じゃあ習作はあったうえで書かれたんですね。

 

: この作品に関してはないです。一応頭の中で、なんとなく繋がってるつもりで、結局一番書きたいシーンだけ書いて、でも説明するのも野暮だから、分かんないまま書いて、一応ヒントだけばらまいて…って思ったんですけど、やっぱりみんな気づかないですね。

 

ふかまち: 主人公が中性的なところで、長谷川町子のサザエさんで戦時中か戦後すぐに家に帰ってくる家族が男女入れ替えて暮らしているってシーンを思い出しました

 

ふかまち: なんか複雑なんだろうなってにおいは感じ取ることができたということです

 

: みなさんちゃんと読んでくれて嬉しいです。もっと硬くて潔癖なかんんじの文体が良かったんですが。今読んでも動かしたくなりますね。下手だなぁ、と。

 

: 戦後すぐに家に帰ってくる家族はどうして男女入れ替えなんですか。

 

: 徴兵されるから?

 

ふかまち: 謎です、歴史のことわからんので

 

P: 意味とかあるんだろうか……

 

: 昔の人ってたまにすごいことしてますよね。男の子って環境に適応しづらくて、早死にしやすいので、女の子として育てる、って本当に会ったらしいです

 

小野寺: 彩さん、次回作も頑張ってください、ね!