たとえば迷子になって闇雲に走り散らした揚句、いっそこのまま果てまで向かってしまった方がつまらない果てが待っている人生を送るよりもいいのではないかと振り切りかけた矢先に、見覚えのない川瀬に行き着いてしまって、左右を見渡しても橋がないから行き場がなくて坐りこんでしまった少年。
普段兄が占有してる自転車を羨ましがって、ある日こっそりと鍵を奪い自らの所有にし、あちこちを走り回った末に兄にも出来なかった芸当をやってのければこれは自分にこそ相応しい代物だと証明出来るのではないかと、坂道をブレーキも利かさず全速力で駆けて転倒してしまい頭から血を流す少年。
放課後の夕暮れが差し込む教室に居残って、課題があるわけでもなし、とはいえ家に帰るのも物憂い、ただただ黄金色に輝く時間の中に身を浸して、この瞬間を知っているのは自分だけだと感じることでむしろこの瞬間を永遠には出来ないかと模索する少女の黄昏た姿を、ドアから盗み見ている少女。
『Li-tweet』(2014 夏号)
( )内の数字は400字詰め原稿用紙に換算した枚数です。
・特集「かける、少年少女」
小説「サマザマナラブ」(121枚):日居月諸
小説「ガラスの街」(10枚):蜜江田初朗
詩「初恋」:る
訳詩「ひき離された愛」:安部孝作
小説「ある天気予報士の手紙」(76枚):常磐 誠
詩「キノシタとわたし」:深街ゆか
小説「The new day」(22枚):崎本 智(6)
エッセイ「子供の頃には」(14枚):Pさん
・自由投稿
詩「ディスタンスのミズ」他二篇:蜜江田初朗
詩「詩3篇」:る
小説「ビター&スイート」(7枚):彩
・連載
小説「書かれなかった寓話」第三回(30枚):日居月諸
小説「合同教会の人びと」第三回(20枚):小野寺那仁
評論「暴力論」第一回(19枚):蜜江田初郎
小説「瞳 子」第一回(18枚):常磐誠
・春号合評会
創作合評第一回