イコ: こんばんは。
aya_kumo: こんばんは~
だいぽむ: どもー
プミ: こんばんはー。あ、綺さん、はじめまして。
aya_kumo: プミさん初めまして、よろしくお願いします。
イコ: 本日の参加は5名です。
イコ: ちぇまざきさんからは、事前に文をお預かりしていますが、あとでみなさんにお渡しすることにしますね。今日は慣れない仕事ではありますが、ホストをつとめさせてもらいます。議論を上手にまとめられるよう、がんばっていきますが、みなさんはおれに気にせず、どんどん思ったことを言いまくってください
プミ: よろしくお願いしまーす
イコ: では、レジュメをお配りしますね
*レジュメ(文責イコ)→資料ページ参照。
イコ: このように、おれなりにいくつかの視点をもうけてみました
aya_kumo: さすがですね、そこまで読み込めてません(苦笑)
aya_kumo: 今日は皆さんからたくさん勉強させていただきます
プミ: 僕も。一番近いのは3の視点、てか、僕にはそれしかないw
イコ: 読んでいるというより、解釈の手がかりを提示しているだけなので、これをヒントに読んでもらえればな、と思うだけですよ
aya_kumo: 私にも3の視点しかなかったです。
イコ: では緋雪さんの登場を待ちつつ、やっていきましょうか。
aya_kumo: はい、やっていきましょう。よろしくです。
だいぽむ: よろしくー
プミ: おねがいします。
【3人の人物造型】
イコ: じゃあまず、みなさんがこの視点、とおっしゃった、「3」について語りましょう
イコ: ピータア、ハイミナーラ、キー子をどういう人物として読みましたか
プミ: 僕から、いいでしょうか?
イコ: どうぞ!
プミ: まずハイミナーラですが、僕は「かれら」=ビート族の世界の「神」的存在だと見ています。
プミ: 理由ですが、
プミ: 廃墟になった教会を見つけ、秘密の場所にしたかったピータアに対し、彼はそこをツウィスト・パーティの場として「分け与え」ています。これは神的行為と言えるのでないでしょうか?
プミ: また、いつもサングラスをかけていて「表情がみえない」ことや、
プミ: 本名が分からないこと、ピータアやキー子に比べ名前のヒントになるようなものがないこと。
プミ: 思い通りになる集団と、集団の無目的な動きが必要だった、といったような表記からです。
aya_kumo: 「機械」と「動力」という表現もありましたよね。
プミ: はい。それも理由の一つだと思います。
イコ: たしかにハイミナーラは、「観察者」としての目を与えられている感がありますね
プミ: あと、これはまったく意味ない発言ですが、「~ナーラ」って、インドかどこかの神様的な響きがしませんかw
だいぽむ: まぁ確かにw
イコ: なるほど、それは考えられる
プミ: まあ、ハイミナールからきているのは分かるんだけど…
イコ: そうですね、かれの造形を、よく表している言葉に
イコ: 「いつも半分夢を見ていた」というのがあります
イコ: 現実世界と隔たったところ(サン・グラス)から、じっとビートたちの動きを観察している
イコ: というような印象を受けますね
イコ: 少なくとも、冒頭部ではそのように感じられます
プミ: 観察者か、神ではなくともね。あとピータアとキー子はハイミナーラの命令を一つも拒まないところも僕には神的に思えたのです。
イコ: なるほど
イコ: ただしかれはあくまでビートであり、ひとりの青年である、というのは忘れてはいけないと思います
プミ: なるほど。それはそうかもしれない。あまり持ちあげないでもいいかなw
イコ: この作品は、ビートへの全面的な肯定から書かれているのではない、ということですね
イコ: 三島はビートではない。あくまで作者である。
プミ: わかります。僕の読んだ結論も、ビートへの肯定という着地点には至っていません。
イコ: 三島はビートに共感していたかもしれないけれど、あくまでひとりの悩める青年として、ハイミナーラに現実の錘をくっつけています。
プミ: 悩める青年、か。それは読みとれてないです…
aya_kumo: 同じくです、どこらへんが青年なのかがよくわかりませんでした。
だいぽむ: 僕も悩みを感じているようには見えない
だいぽむ: むしろ完全に染まりきっているきがする
だいぽむ: 確信的だ
イコ:『ハイミナーラは唸るような声をあげて叫んだ。
「やめろよ。今夜は踊りに来たわけじゃないんだ」』
イコ: これがどこを根にして出てきた言葉なのかを考えると、見えてくるように思うのですが
だいぽむ: 君の解釈をお願い
イコ: ハイミナーラは苛立っている
イコ: 猫の死体を見たシーンが非常に印象的です
イコ: キー子とピータアは、猫をむしろ嬉々としてこがしているのに対し、ハイミナーラだけはそうしない
aya_kumo: 決して乗り気ではなさそうですね、たしかに。
プミ: あくまで神的存在として自らは手をくださない。僕はそのように判断しましたが、確かに乗り気ではない。
だいぽむ: そういう表面的な行為を嫌悪していると思ったんだけど。
イコ: 現実の臭いを嫌悪しているんだよ
イコ: かれらは自分のことを老人だと思っているくせに
イコ: キー子とピータアはむしろ死に対して、まだ若くて自覚的でない
イコ: しかしハイミナーラだけは、死の臭いと残酷さつまり「現実」を、かぎとっている
イコ: そこから逃避する行為が、かれにとってのビートなのです
だいぽむ: はいみなーらは22だっけか
プミ: そうです。
イコ: そうですね
イコ: 別に踊ったっていいし、かれらの人物は、踊りと切り離せないところがあるけど、ここでハイミナーラは言う。「今夜は踊りに来たわけじゃない」
イコ: これが何より、かれの苛立ちを示していると思う
(緋雪さん登場)
イコ: あ、緋雪さんこんばんは!
だいぽむ: こんばんはー
aya_kumo: こんばんは!
プミ: 緋雪さんこんばんがー
プミ: ww
緋雪: こんばんが~w
だいぽむ: w
プミ: すいません
緋雪: いえいえw
緋雪: そう、ハイミナーラの苛立ちを表しているんです。
だいぽむ: いらだちを表しているのに異論はないです
aya_kumo: どこからハイミナーラが「現実」をかぎとっていると考えられるのでしょうか?
だいぽむ: 確かにその他のシーンであまりそういうのをにおわせるものが見つからない気がする
イコ: かれがサン・グラスをはずさないところですね
イコ: サン・グラスをはめるというのは、自発的行為です
イコ: 神はそのまま無条件で神ですが
イコ: ハイミナーラの場合、サン・グラスをはめたり、睡眠薬を飲むことによって、はじめて現実から隔たることができるのです
aya_kumo: サン・グラス越しにしないと現実がみえてしまう、という読み方ですか、なるほど。。
イコ: 現実を意識するからこそ、現実から隔たろうとする。ハイミナーラに関してだけは、現実の錘が常にかれの意思を決定するのです。
プミ: 現実をかぎとっているから無自覚なものと比べ、「自発的に」現実から、自らを遠ざけている、ということですよね。ピータアがサン・グラスをかける、かけようとするところがどこかにありませんでしたっけ。今探してますが
だいぽむ: ありますね
イコ: ピータアもときどきかけるんですが
だいぽむ: 椅子に座るとこです
イコ: かれの場合はむしろ、若さと無邪気の発露なのではないでしょうか
イコ: サン・グラスに、ハイミナーラほどの意味付けはされていない
緋雪: それこそ、少しの格好付けなんですよね
イコ: ただしそのぶん、ピータアは恐怖に対して守るものがなく、鋭敏なのです
イコ: ハイミナーラは現実からの防御壁をもっている、といえるでしょう
緋雪: ピータアが恐怖に対して守ることがないと読んだのは賛同します。だからこそ、鋭敏になり、少しのことに対して過敏に反応する
イコ: いちばん年寄りぶってますが、いちばん若いんですよ
だいぽむ:『ハイミナーラの暗い圧力のおかげで、二度と元の姿に戻らぬものに化身してしまいそうな気がした』
だいぽむ: 俺はここから、ハイミナーラはすでにそういうものに化身してしまっていると受け取ったんだよね・・
aya_kumo: 「暗い圧力」というのが「現実」の匂いがします。
イコ: 「元の姿に戻らぬもの」、とはいったいなんなんだろうか?
イコ: いったいハイミナーラは、なにになったの?ピータアは、なにになろうとしているの?
緋雪: 個人的には「大人」になったんだと考えました
イコ: 大人という意見には賛成します。ピータアは子どもですね。
プミ: 僕も緋雪さんに賛成、ちょっと飛躍しすぎかもだけど、結末ではもはやビートではないと思うのですが。
イコ: そう、ビートじゃないんですよ。それがこの作品の肝だと思う
だいぽむ: 全員ビートじゃないね
イコ: ただ、22歳ってことを考えてみると、ハイミナーラは決して「大人」になりきってはいないと思いませんか?じゃないと、地下室に入る行為を、そんなに楽しむはずがないでしょう。
イコ: もういまや大人になろうとしているところで、ぎりぎり子どものままでいようとしている、
イコ: しかしたとえば大学生サークルの四年生のように
イコ: 自分は先輩面をしている。上の年齢を気取っている
緋雪: だから、サングラスをかけていると思うんだよね。見たいものは見るけど、見えそうなものは隠そうとする
プミ: 地下室は「未知」ですものね。大人よりも、子どもの方がそういうものに近づくのかもしれない。
イコ: 部室のような、閉鎖的コミュニティだと思ってみれば、とらえやすいかもしれませんよ
aya_kumo: その閉鎖的空間の中であくまで大人を気取っている、それがハイミナーラ?
だいぽむ: 意識的に大人を気取ってはいないでしょうね
イコ: 気取ってるんだけど、自分は大人になりきりたくないって気持ちももっている
緋雪: 大人への一つの境界線を越えてしまったら、キー子・ピータアと居られないことも知っているから
イコ: そうですね。やはりそちらにシンパシーがあるんですよ。冒頭の、藷の表現が、対比になっているわけです
イコ: 現実世界には、藷ばっかりだって思ってるわけですから
緋雪: ハイミナーラは自分が藷もだって分かっているんですもんね
イコ: 認めたくないんでしょう
aya_kumo: その藷の立てた理論を嫌っている。
だいぽむ: じゃあピーターが恐怖を感じたのは、ハイミナーラに大人の匂いをかぎ取っているからってことかな
緋雪: 多分、漠然とだけどかぎとっていると思う
緋雪: キー子が片足突っ込んでいることも
だいぽむ: 僕は何かもっと不気味なものを感じたけどなぁ・・
aya_kumo: 「大人」という「現実」の匂いと感じました。
イコ: ハイミナーラの行おうとした、現実遊びが、ピータアに「現実」を意識させたんでしょうね
プミ: それは僕も思う。ピータアが一人になると突然襲ってくる「真っ黒な憂鬱」っていうのは「現実」?
だいぽむ: 現実から逃げ回って薬漬けになっているハイミナーラの姿
だいぽむ: に恐怖を感じたのかなぁと・・・
だいぽむ: キー子の唇は自分と関係のない遠い災禍だと思ってる
イコ: ハイミナーラは現実についてもっとも意識的。その現実的行為をあえて二人にやらせて、そのアイロニーな効果を確認したかった。しかしアイロニーには到底ならなかった。
だいぽむ: でもそこから逃げ続けるにはハイミナーラのようになるしかない
だいぽむ: その狭間の葛藤がピータアだと
だいぽむ: とらえた
緋雪: 現実が薬漬けのような状況ってことに恐怖を感じたと思ったんだけど
イコ: そう、薬に頼るしかない
イコ: そうでなければハイミナーラはビートでいられない
だいぽむ: キー子は明らかに現実にもっとも近いよね
イコ: キー子はハナからビートでもなんでもないと思う
だいぽむ: 流行に乗っかってるだけのように見えるね
イコ: 彼女は単なる夢見る乙女
プミ: 男二人の取り合いを夢見たり、藷の真似ごと
緋雪: ちょっとした反動で大人になる状況ですね
イコ: ときがくればなるでしょう
イコ: そして「若いころはわたしもよくやったわ」って思うような、ふつうの母親になる気がする
だいぽむ: w
緋雪: 女性の強さもあらわれているよね
イコ: どういうところから感じられました?
緋雪: 今夜こそ、男と女のまじみな血みどろの戦いが~
緋雪: の部分かな
aya_kumo: 私はラストのセリフからそう感じました。
イコ: ラストのセリフは、かなり象徴的ですよね
だいぽむ: 僕はピーターの悩みへの徹底的な無理解ととらえた
イコ: おれはもっと、ビート的なものへの否定だと思っているよ
だいぽむ: 否定ね
だいぽむ: 確かにそれくらい強いニュアンスかもね
だいぽむ: ヘリコプターの広告も読めないしね
イコ: あのシーンも、ハイミナーラとキー子のずれを示しているでしょう
だいぽむ: そだね
イコ: キー子はハイミナーラの夢想を、地に落とすんだよな
緋雪: ハイミナーラの子供でいたいという考えをキー子のずれが現実を見せるんだよね
イコ: キー子は二人と違って、肉体や性、血を期待しているところがある
aya_kumo: より現実的なものへの期待ですかね
イコ: そうですね
イコ: だから最後にも現実的なセリフが飛び出すんですよ
イコ: ハイミナーラの「嘘を言ってやがる」は、むしろ現実に敗北したすがたのような、もう夢想を追いかけられない人間のすがたが描かれているように見える
だいぽむ: 確かにハイミナーラとキー子ではニュアンスが違うね
【タイトルの「月」とは】
イコ: そうであれば、ピータアのいう「月」がなんであるかも、徐々にわかってくると思うのですが
イコ: ちなみにこの作品、「月」は一回も出てきません
だいぽむ: 一言であらわしにくいな
aya_kumo: 私もタイトルの意味するところが気になっていました。
だいぽむ: しかし何となくわかるってのが、凄いとこなのかもしれんね
イコ: そうですね、一言でぴしっとはいえないけれども
緋雪: ある程度大人になった人なら何となく、分かるって感覚なんだよね
イコ: ピータアのいわんとする「月」は、読者にも伝わるでしょう
だいぽむ: 大人になったら分からない感覚、では?
イコ: いや、わかるんだと思うよ
だいぽむ: ほむ
イコ: 大人になるから、子どものころじぶんが見ていたものがわかるんだよ
イコ: 作者の三島は、そういう目で「月」を見せずに「月」を描いているんだと思う
プミ: 僕は「月」はビートの世界でない世界=藷の世界=現実を象徴するものだと思っていました。
プミ: ビートは当たり前の理論を嫌っていたんですよね。
プミ: 当たり前のことを月並というし、その語は格言が出てくるところの描写にもでてくる。
イコ: ふーむ、まるきり逆の発想ですね
だいぽむ: 月という美しいイメージと、この小説の中での現実のイメージとは背反しませんか?
だいぽむ: 闇の中を照らすイメージ
プミ: それは、すこし疑問に思っていたところです。
だいぽむ: 三人とも
だいぽむ: 教会に差し込む光だとか、闇の中のろうそくの光だとか、そういうものを愛しく思ってる
だいぽむ: 月もそれに連なるものかなと
だいぽむ: 思っているんですが
イコ: おれもだいぽむに賛成で
イコ: そうであるから、この一文が意味をもつのではないか
イコ: 『しかし梅雨雲はなお垂れこめて、夜は深く、雨もよいの空を二人は知っていた』
イコ: 「お月様が見えるんだよ」という言葉に対する、二人の感覚です
だいぽむ: 「しかし」って言ってるからね
プミ: ふーむ。
プミ: そんな気がしてきました。
だいぽむ: 「お月様」という呼びかけも
だいぽむ: やはり肯定的に見ている証拠だと思う
イコ: 子どもっぽさが出るしね
aya_kumo: 月が「現実」ならキー子やハイミナーにラこそ見えているべきものかもしれませんね。
だいぽむ: ですね
イコ: たしかにプミさんのとらえかたでいくと
イコ: キー子やハイミナーラが、現実を直視したくないがゆえに、「嘘だ」と言っているようにも考えられるんですよ
プミ: そういう解釈でした。
緋雪: プミさんの捉えかたもありに聞こえてきた
イコ: しかしわざわざらせん階段とハシゴをのぼりつめてまで、ピータアが現実に近づく理由は、わからない
イコ: 恐怖を感じているのなら、むしろ逃げ出すでしょう?
プミ: それは、キー子と手をふれあって、ピータアがむしろビートの世界から逃げ出し、現実に近づきたかった、ということだと思うんですが。
だいぽむ: ピーターは明らかにキー子に嫌悪を示してますよ
だいぽむ: 自分には関係のない遠い災禍です
イコ: それなら、やはり「現実遊び」に恐怖を感じるのは、おかしい気がします
だいぽむ: キー子はあの時明らかに現実の象徴ですね
イコ: 手がふるえてるんですよw期待してるw
aya_kumo: 同感です。
緋雪: 確かにな~
プミ: うん。現実の象徴だというのは分かる。それで、恐怖を感じているんだけど、それは自分が今までビートだったから、恐怖を感じているのであって
プミ: これが、一人でいるときに襲ってくる「真っ黒な憂鬱」と同じで、
プミ: ピータアは若く、ビートに染まりきっていないから、そのような現実を感じていて
プミ: キー子と手を触れたことによって、現実に取り込まれた、というか。女だったら「白き手のイゾルデ」ってたとえられるとこがあるでしょう。
プミ: 「白き手のイゾルデ」って「トリスタンとイゾルデ」の中で、トリスタンと結婚するけれど、触れられず悩む女の人らしいんです。よくは知らないんだけど。
だいぽむ: へぇ
イコ: なるほど。キー子の造形につながりますね(後記:ピータアのことでした。すみません)
緋雪: 逆に、キー子と寝てしまったことによって現実に取り込まれそうになった。だからこその恐怖なのかなと思いましたけども
プミ: だから、それまで現実の影を「真っ黒な憂鬱」と感じ、ビートを演じてきた?ピーターは、
イコ: 白き手のイゾルデはピータアの比喩か・・・
だいぽむ: ピータアのことだね
プミ: はい、そうです。
プミ: キー子という現実とふれあうことで、恐怖を感じたけれども、結局現実に取り込まれ、むしろ地下室が恐怖として、逃げ出した。
だいぽむ: 結局現実に取り込まれ
だいぽむ: 取り込まれている描写があったでしょうか?
プミ: いや、確かにそれはないんだけど、そこはゆっくり描写すると、逃げ出すというアクションが遅くなるから、とばしたと思った。
プミ: で、地下が怖いのなら、上へ、より上へ行くよね。
プミ: だから、上まで登った。
プミ: そして、本来夜にあるのが当たり前の「月」を、梅雨空なんだけど「見える」って嘘をつく。恐怖から逃れようと、現実にすがろうとしている、と読んだ、で二人のセリフは
プミ: 「嘘を言ってやがる」にはあまり意味を感じず、むしろ「あの人もとから嘘つきなんだから」に重要さをかんじた「もとから」
プミ: つまり、ピータアはもとから真っ黒な憂鬱に襲われていたくらいだから、ビートに染まりきってなかった、ビートでなかった(若かった?)
プミ: キー子もまたビートであるとは言えないから、キー子もうそぶく。「いやな子ね。嘘つきもいいとこだわ」
プミ: という感じに読んでいたんですが…
イコ: なるほど
イコ: まるきり逆の読み方ですが、説得力が感じられました
プミ: そうだよね。逆なんだよね…
だいぽむ: うーん、取り込まれる描写を省くのはおかしくないです?
だいぽむ: 凄く重要な気が・・・
イコ: プミさんの読み方なら、ハイミナーラは「ビート」に染まり切った存在、ということですかね>はじめに神とおっしゃっていましたし
プミ: そういうことになる。で、取り込まれる描写を省くのはおかしいというのは、さっき理由を述べたものの弱いと思うし、ぼくもおかしいと思うんです、だいぽむさん。
プミ: だから、どうなのかなあ、という思いはしていた。
aya_kumo: すみませんが、そろそろ時間なんで落ちます。途中退出失礼します。
だいぽむ: あ、はい
だいぽむ: お疲れ様ですー
イコ: わかりました。おつかれさまです。今日はありがとうございました
プミ: ありがとうございました。
緋雪: お疲れさまでした~。いつもありがとうございます。
aya_kumo: こちらこそ、ありがとうございました!
(叢雲綺さん退出)
イコ: 現実遊び→キー子もまた現実の象徴→恐怖→逃避→夢想を求める
イコ: このニュアンスが、やはりしっくりくるところがあります
イコ: たしかにピータアは、真黒な憂鬱をときおり感じる
イコ: それはまったく現実が見えない、ということではない
イコ: しかし、それをのぞきこんで意識することはまだできない
イコ: しかし現実遊びによって、その真黒な憂鬱が、現実的な女の肉体に託されて、顔を出す
イコ: かれは逃げる
イコ: しかし教会という場所設定がまた妙で、ここから出てしまうと、かれには行き場所がないんですよ
イコ: だから尖塔という、最も「教会」的な部分にのぼりつめる
イコ: かれらにとって教会とは、かれらの夢想を広げるのにちょうどいい場所ですからね
イコ: 壁に天使が飛んでいると思って楽しむことだってできるわけです
緋雪: 自分たちの価値観を保てる場所だしね
プミ: ふむ。わかります。結局「月」の設定を逆にして、逆算していって僕のような考えになって、さっきの現実に取り込まれる描写がないという、欠点を飛ばしてしまったことがいけなかったと思う。
【「月」のもっている価値/三島の作家性】
イコ: まあ、彼らはきちんと現実を知っているんですよね
イコ: 天使のことにしたって、車のヘッドライトがまき散らす光にすぎないといっているし
緋雪: ほぼ現実を知っているんだけど、やはり恐怖があるから、「自分たちの居場所」に居続けようとする。
イコ: ビートを扱っているけれど、意外と現代の青年にも共通するんじゃないかと思いますよ
イコ: 青年のモラトリアムな感情が、たまたま「ビート」という当節の流行になじんだだけなのかな、と
だいぽむ: そだねー
イコ: 「ビート」と「ニート」語感が似ている・・・
だいぽむ: w
緋雪: w
プミ: そうですねw
緋雪: 昔も今も基本的な若者の行動は似ているかもしれないね
イコ: やっぱり、そういう普遍的なところを描いている意味で、月は今に至っても価値をもつと思うんです
イコ: 三島由紀夫の文学性は、「美」と「現実」の二項対立で考えられるところがあるんですよ
イコ: 「美」とは、その人間にとって象徴的なもので、現実から逸脱しているところがある
イコ: しかし三島は美のみを描く作家ではなかった
イコ: 「詩を書く少年」では、美的文句を少年が詩にあらわそうとすればするほど、現実が顔を出して少年を苦しめる、といった描写があります
緋雪: 三島自身が葛藤して、「美」を追求して文学にも汚さと美を対極的に書いている。
イコ: その理想に、現実の錘をつけることのできる作家なのだと思います。だからこそ、小説が偏らないで普遍的な魅力を備え、いまなお文学として読まれているのではないかと。
イコ: そう、三島が求めたいのは、あくまで美なんですけどねw
イコ: 美を求めたい人間の、悲劇を描くんですよ・・・
緋雪: 自分自身がそうだったように
イコ: そう
緋雪: あの肉体改造を見れば嫌でも分かる。彼の作品を読めば更に分かる
イコ: 天皇を象徴的(後記:理想的)にとらえる考えも、そうですよね
緋雪: ある意味方程式通りなんだよね
イコ: だから月も、そのような流れで読めると思うわけです。プミさんのテキスト論からすれば、ちょっと引っかかるところかもしれないけれど・・・
プミ: とっても勉強になる。本当にw
プミ: テキストだけ追っていったら間違いないと思ってるんだけど、それだけでは捉えられない、部分があるのがすごく分かります。また、読む方(僕)の精度の問題もあるなw
緋雪: 読む側のことに関してはツイ文でオイラも痛感しているので、これからみんなで勉強していきましょ。
だいぽむ: 読書会はためになりますね
だいぽむ: もやもやしていたのがだいぶふっきれた
イコ: おれもですよ
プミ: ほんとためになるよ。とってもうれしいです。こうやってたくさんの人と文学についてちゃんとしゃべるの、初めてに近いから。
だいぽむ: 多分読書会課題作品じゃなかったらサラッと読んで次行っちゃってるなぁw
緋雪: オイラもですね
イコ: でも意外と、勉強になる作品でしょ?
だいぽむ: だねぇ
プミ: そうだねえ
緋雪: 今の自分に必要な作品だよ~
イコ: じゃあワンブレイクはさんで、ちょっと4について語りませんか
イコ: みなさんと三島のテクニックについてちょっと話したい
だいぽむ: うい
イコ: みなさん若い作家なわけですから
プミ: テクニックについてはかなり気になります。
緋雪: うい、22時台で退席しますが、それまで語りたい
イコ: じゃ21:30からということで
プミ: はーい
緋雪: うぃー
イコ: 休憩中に、ちぇまざきさんの感想を送付しておきます。ご覧ください。
*ちぇまざきさんの感想→資料ページ参照
第2部へ続く。→第2部「若い作家のための三島のテクニック」