大人らの土足に
踏まれたあとの庭に
にきびの花がまたひとつ
かつては竜が飛んでいた
ものすごい風を切って
ただの積木がそこまでになるとは
誰も思わなかったろう
甘い囲いの外から
生きるものめがけて
大人らの歓待の腕
にきびの花をつぶすたび
なみだが頬をつたって
庭には竜が流れつく
一発でしとめられてしまった竜が
かつての美しい声はなく
きらめいた鱗は剥がれ
ひるがえる翼はもがれた
そこに何がいるのか
子どもは知りたくもなく
両眼をつぶして出ていった
棄てられてしまった庭には
まだ竜がうずくまっている
まだ竜がうずくまっている