2014年
3月
09日
日
光を食べて膨らんだ
獣の細い目のなかに
眠らずうずくまる人びと
弱い光じゃ仕方ないと
餌箱にブルーライト
何時間でも腹を満たせる
今のところは……
立ち上がる人の
足元のかげは
まあるくそこに貼りついた
かげのない人の背は遠ざかる
さあ鈍重の
獣はどこへ
2014年
2月
22日
土
「無題」
家鴨のカーブが欲しいと
願ったあの子の傘は消え
屋根の向こうに花火の音
金魚鉢にはうつらなかった
枯れ枝ばかり運びこまれた
五年経ったら見分けられない
指の下の緑の管と
船の記憶をあの子はもってる
折りたたまれてしまった日々の
曲がりきれずに生きること
海に行こうと言われたこと
加速のついた表情のこと
短距離走者のあの子は
鼻をかんでいる
まあ、ずいぶん小さな音で