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2014年

3月

09日

光の国:新嶋樹

光を食べて膨らんだ

獣の細い目のなかに

眠らずうずくまる人びと

 

弱い光じゃ仕方ないと

餌箱にブルーライト

何時間でも腹を満たせる

今のところは……

 

立ち上がる人の

足元のかげは

まあるくそこに貼りついた

 

かげのない人の背は遠ざかる

 

さあ鈍重の

獣はどこへ

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2014年

2月

22日

無題三つ:新嶋樹

「無題」

 

家鴨のカーブが欲しいと

願ったあの子の傘は消え

屋根の向こうに花火の音

 

金魚鉢にはうつらなかった

枯れ枝ばかり運びこまれた

五年経ったら見分けられない

 

指の下の緑の管と

船の記憶をあの子はもってる

折りたたまれてしまった日々の

 

曲がりきれずに生きること

海に行こうと言われたこと

加速のついた表情のこと

 

短距離走者のあの子は

鼻をかんでいる

まあ、ずいぶん小さな音で

 
 
「無題」
 
胸の奥に花を浮かべた人たちの
お行儀のよい笑顔を覗く
消えてゆくのか指 一本ずつ
 
肌を塗るもう一度塗る
審判を隠すパウダーの色
どこにいてどこにもおらず
冬空に雲 覆い尽くして
 
一枚ずつ
一枚ずつ沈んでいく人間の花の
美しい色が かなしい
 
 
「無題」
 
梯子から落ちてしまった者は
はんぶん月にかくされて
二度と来ぬものを待っている
 
無音の庭園の真ん中で
梯子がひとつ燃えている
火の粉はどこへ向かうだろう
 
やがてまぶしい天の真上から
神の指が降りてきて
クッキーを一抓みするように
 
何かをさらって いってしまった
 
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