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三十一字の少女幻想:七夜月尚

【あたらしいはる】

 

越してきて 最初に見たのは 電線で 君の指だけ コンパスにして

 

ろまんすを ろまんすとして 味わえし 妹らのカバン 髪かざりキラ

 

刺青を ほんのちょっぴり 入れてるの 聖人ぶってる あのコにタルト

 

学友の 良からぬ噂 惑わされ くちづけを待つ 噴水の陰

 

 

【あついなつ】

 

彷徨いて 薔薇園の縁 腰掛ける 夢か現か 誰も居ぬ庭

 

君が眼の 余りの寒さに 戦きて 熟れること無い 檸檬の実

 

眠そうな ピラニアの群れ 眺めつつ 水槽のふち しばし玉座に

 

毒のむの 薬をのむの 同じこと のんでも死ぬし のまずとも死す

 

 

【なんにもないあき】

 

滅び行く 王国の夢 閉じ込めし 宝物庫の鍵 湖底に沈めて

 

遠き日に 星の声のみ 木霊する 忘れ去られし 遊具を撫でる 

 

無花果の 薫る紅茶を 愉しみつ 風の泣き声 強まる夜更け

 

詠むほどの こころがないワ 困ったワ 曖昧迷子 来世はリルケ

 

 

【おわりのふゆ】

 

君が手の 氷菓眺むる 冬の午后 ミント味する 首筋の息

 

霜月の 夜に灰汁とる 君が背に ふんわりふわり 幸が降りつむ

 

「綺麗だね」 友と言い合う 夕暮れに ツリーの星も 微笑みかける

 

テレビでは 雪がいっぱい 降る予報 マトモな人が 闊歩する街

 

 

【くりかえしのいつかのきせつ】

 

手紙のみ 呉れしあの子の 面影を ただ一輪の 花に託して

 

薄青い 想い出ばかり 甦る 学舎の窓辺に 寄りかかる友

 

三十一字の少女幻想.pdf
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