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真昼の濁水:深街ゆか

(とても澄んでいて、青みを帯びていたかもしれない)

銀色にかがやく産毛をなであげる真昼の風にもたらされた余白も
まぶたのあたりを遊びまわる光の粒みたいに
折り重なるようにして成長するあからさまな
水に浮かべるという意味のめまいのような症状だったのかもしれない

(反射する光、手鏡をともだちの顔にむけて湯気のたつような明るさに)
竹櫛でといてもとけないくらいに絡まった植物の蔓は薄切りにされて
そんな遊び
どこでおぼえたの
あなた
おさとがしれてしまうわね、と微笑むともだちの
池の水面がただれるようにさんざめいて赤ん坊のころの記憶のように
ぼんやりとした光のなかで赤いスカートが
風をはらみ無数にふくらむ様子はきっとえいえんに繰り返される

(溢れだしてしまうほどになって、濁った水のよう)
花柄の便箋にまっすぐ流れる罫線をせき止めるように落とした
生まれるよりまえの受精よりもあとのところで
いくつかの原因はこしらえてあったのかもしれないと
花壇に咲く花をふみつける猫の模様とよく似た地形の街で
薄いヴェールを何枚も重ねたような
熱を帯びるごとにだらだらと湧きでる手紙を
だれかれかまわずに送ったことを恥ずかしくおもう

(風がふくたび、あつい層になった沈殿物が舞い散って)
ここからそこまでの傾斜に咲いた花のかおりにむせ、
暗記したはずの数え唄の歌詞をわすれて夜がとおく感じるまぶたを
まっすぐにとじて泣くふりをするまでは

(とても澄んでいて、青みを帯びていたかもしれない)