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引用の杜 ―時間―

――「時間」に関する引用。

『「吠え声が聞えるのは、城の中で誰が死んでもというわけではございません。セルノグラツ家のものがここで死ぬ時、臨終の前に、おちこちに狼があらわれて、森の端で吠えるのでございます。この辺の森に巣をつくっている狼は、ほんのわずかなものですけど、そんな時には、猟番の話ですと、何十頭という狼があらわれて、物蔭をしのびあるき、声をそろえて吠え、お城や村やあたりの農家の犬どもが、狼の声におののき怒って、これがまた吠えたてます。そして、死んでゆく人の魂が肉体を離れる時、お庭の樹が、裂けて倒れるのでございます。セルノグラツ家のものが、先祖伝来のこの城で死ぬ時は、こんなことが起るのでございます。でも、他人が死んでも、もちろん、狼も吠えはいたしませんし、樹も倒れはいたしません。ええ、そんなことが起るものですか。」』
《サキ『セルノグラツの狼』》
『「確かにある」「あり得ない? いやある」「走馬燈の様なもんじゃ」「「死ぬ」って瞬間に時間が超スローになって自分の人生振り返る感覚あるじゃろ? あれに近い」「むしろそれより信憑性は測りやすいぞ」「なにしろ「自分」じゃなく「相手」がその時思っていたことを聞き取るんじゃから」「本人の他は絶対に知り得ぬ情報を聞くこともあるわけじゃ」「互いが証人よ」「ある武道では心滴拳聴とよばれとる現象よ」「真の強者同士がぶつかり合う瞬間にはよくある時間感覚の矛盾じゃ」』
《冨樫義博『HUNTER×HUNTER 25巻』》
『この科学万能の暗黒時代に生きる人間以下の存在にとっては、エピダウロスで行われていたような、儀式や礼拝と結び付けられた治療術などは、まったくのたわ言のように思えるだろう。私たちの世界では、盲人が盲人の手を引き、病人が病人から治療を受ける。人間は絶え間ない進歩を遂げているが、しかしその進歩が導く場所といえば、手術台、救貧院、精神病院、塹壕といったところなのである。われらの時代に治療者はいない――』
《ヘンリー・ミラー、金澤智訳『マルーシの巨像』》
『はまゆう、はまなす、はまなでしこ、といった浜に寄せる花が熱波を浴びて咲いていたこと、他家の軒先の、色づきを控えたからすうりの実にけだるい目を遣ったこと、永遠子の被った麦わら帽子が風にとばされ、ながい髪がゆれていたこと、足裏の皺の一筋一筋に砂がまつわり、ゴム草履の緒ずれに海水が滲みるのをこらえてこの坂道を通ったこと。どれも夏の記憶ばかりだった。』
《朝吹真理子『きことわ』》
『殺人の刑期が十五年とすると……、(中略)時効内に発覚したら、現在の年齢に十五年足すと、五十歳になってしまう。五十歳まで拘禁されたら、青春は、とりもどせない。なんとしてもかくし通さなければ……。』
《つげ義春『ヨシボーの犯罪』》
『拉麺をフォークで食べる正午なり』
《長島有『春のお辞儀』》
『夜でも 昼でーエも/牢屋は暗い。/いつでも 鬼めが/窓からのぞく。』
《小林多喜二『一九二八・三・一五』》
『どうしたの? 来ないのにね、一週間も! 七日七晩よ! 百六十と八時間だわ! 恋人を待ちこがれる胸の時計では、その百六十倍にも思えるわよ。いやだわね、数えるだけでうんざりしちゃう』
《シェークスピア『オセロウ』》
『死のうと思った。夏が終わって寒いなと感じた頃に彼女が秋用のボーダーの七分袖を買ってきてくれた。生地は麻でできていて、もちろんだが、きめ細やかに糸が編み込まれている。その服を着るためにも秋まで生きようと思った。』
《織田理『フタバ』》
『次号予告!! プレイボーイ No.24. Jun 16th 2014 定価400円 6月2日(月)発売』
《集英社『プレイボーイ』》
『ペイトン・ファーカーは、橋を抜け落ち、意識を失い、すでに死んだも同然になった。この状態から目が覚めた。とんでもなく長い年月がたったように思えたが、ぎゅっと喉を締めつける痛みがあり、息の詰まる感覚があって、意識を取り戻した。』
《アンブローズ・ビアス『アウルクリーク橋の出来事』》
『この関係をあと二泊だけにしようというのは、部屋に戻ってきたあとに、二人で話をしてそう決めた。あと二泊というのは、トータルでいうと四泊五日で終わりということだった。それはきりがよくていいのではないか、と私たちはどちらも思った。いずれにしても、それくらいで限界だった。』
《岡田利規『三月の5日間』》