twitter文芸部のつぶやき

フォロワー募集中!

オフィシャルアカウント

部員のつぶやきはこちら

現在の閲覧者数:

「岡山オフレポート」 6

二〇一三年八月七日岡山へ

 

もともと小野寺さんとイコさんと6の三人で行く予定でしたが前日に小野寺さんが怪我をしたので、イコさんと6の二人で岡山小旅行ということになりました。

夏の朝、滋賀県から在来線で岡山駅を目指します。

旅のお供は『風立ちぬ』『菜緒子』。岡山の地で堀辰雄の読書会をするためです。

 

岡山駅のトイレ

 

岡山駅に到着して、まずトイレに立ち寄って用を済ませて手を洗っているとぽんと肩をたたかれた! イコさんだった! まさか男子トイレで会うことになるとは……。

そこから僕らは「かきおこ(牡蠣のお好み焼き)」を目指して街を歩き、目的の店まで辿りついたはいいけれどなんと「定休日」だった。うそーんっと悲しみながらも、近所にみつけた「はちのす」という喫茶店に入る。(とにかく暑い日で、早めに涼みたかった!)偶然入った店だったが、親切なおばちゃんが店を切り盛りしており、なかなか味わい深い雰囲気を漂わせていた。そこでおすすめのオムライスを注文して、アイスコーヒーを頼んだ。二人ともお腹をすかせていたからオムライスはすぐに食べ終えてしまった。ネットでもリアルでもイコさんとの会話はやはり小説の話が中心。のっけから、小説を書くことについて互いの考えを話し合う。

吉備路文学館

 

そして、岡山でぜひ行ってみたかった場所へ向かう。

それは「吉備路文学館」である。

岡山という場所に縁のある作家はなんとこんなにもいる。

 

吉備路文学館HPへ

 

好きな作家も結構おり、HPを見ながらイコさんと一体こんなに沢山どうやって展示しているんだろう! 

いったい何が待っているんだろうとわくわくしていた!

太陽が重く照りつける日、滝のように汗をかきながら僕らは岡山駅から徒歩二〇分ぐらいかけて吉備路文学館を目指した。

 

到着して中を覗いてみると「竹久夢二」展と「東川篤哉」展が開催されていた。二人とも岡山に関連する書き手だそうだ。まずは「竹久夢二」展から入ってみた。竹久夢二というひとは画家であるは知っていたけれど短歌や詩を書く文学者という一面を持つことついては知らなかった。僕は絵画の展示よりも、紹介されている夢二の短歌や詩が素晴らしいと思った。絵よりもむしろそちらの方に興味を持った。あいにく、そのとき展示されていた句を思いだすことができないが、雰囲気を紹介するために青空文庫でみつけた素敵な詩を紹介しておこう。

 

歌時計

ゆめとうつつのさかひめの
ほのかにしろき朝の床。
かたへにははのあらぬとて
歌時計のその唄が
なぜこのやうに悲しかろ。

紡車

しろくねむたき春の昼
しづかにめぐる紡車。
をうなの指をでる糸は
しろくかなしきゆめのいと
をうなの唄ふその歌は
とほくいとしきこひのうた。
たゆまずめぐる紡車
もつれてめぐる夢と歌。

 

『どんたく 絵入り小唄集』竹久夢二(青空文庫より)

 

 

東川篤哉」という作家はいまをときめく『謎解きはディナーのあとで』の作者。様々な職を経て作家になったようで、こちらはそういった生い立ちや経緯なども紹介されていた。編集者の赤が入った原稿も見ることができて、このようになされるのかと、プロの緻密な校正に驚いた。三〇分ぐらいで二つの展示を見ることができて、意外とコンパクトな文学館でした(笑)。

歩きながらの句会

 

読書会をするために岡山駅付近のカフェに行きましょう、ということになり再び岡山駅に戻る。途中、夏らしい風景が目に入ってきた。緑の柳、水路を飛び立つ鷺、水面に揺れる藻などが風流に感じられた。

「何だか一句詠みたいですね」。そこで僕らは題材をまだ色づいていない「あおもみじ」に決め、岡山駅に着くまでを制限時間として句会をすることにした。

イコさんも俳句を始めてまだ間もなく、僕は始めるにすらいたってなかったから二人とも素人。決まりもよく分かっていない句会だけど、とにかく詠んでみることにした。

できあがったのが次の句になる。

 

■彼もまた 明日の夢見し 青紅葉……イコ

■夏化粧 みなもに映る 青椛(あおもみじ)……6

『菜緒子』読書会

 

急に土砂降りの雨が降り始めて、僕らはなかなかカフェをみつけることができなかった。カフェをみつけてもそれは読書会ができそうな落ち着いた場所でなかったりとして徐々に疲労していった。そんなとき、オアシスのように百%桃ジュースを販売する屋台があり、そこで桃ジュースを飲む。これがこの旅で飲み食いした中でもっとも美味しい食べ物であった! さすが岡山のもも。元気を取り戻し、偶然みつけたホテルの一階カフェで読書会をすることにした。紅茶とケーキを食べながら、『菜緒子』そしてジブリの『風立ちぬ』について熱く議論した。(詳細は読書会ログをお読みください)

 

 

「山本二三」展

 

読書会後、カフェ探しの途中でみつけた「山本二三」展に立ち寄ってみる「山本二三」さんはジブリなどで背景を担当してきた職人さんである。写真を見るかのように『火垂るの墓』『となりのトトロ』『もののけ姫』の背景は説得力にみちた美しいものであった。閉館時間ぎりぎりだったので、走るように見てしまったがそれでも記憶にはしっかりと残っている。

 

『時をかける少女』(細田守監督)の背景も手掛けていたようだ。展覧会の最後に写真をとるスペースがあった。そこには映画のワンシーンの背景が描かれていて、その中に自分が入りこむことができるようになっている。坂道の前でこちらを振り返るマコトに代わり、イコさんに入ってもらう。『時をかけるイコ』である。

 

居酒屋

 

旅も終りが近づいて岡山駅周辺の店で晩ごはんを食べつつお酒を飲む。選んだ店は「かっぽうぎ」という居酒屋。居酒屋定番のからあげやたこわさ、串焼きなどをもりもり頼む。やはり定番のつまみが一番美味しい。イコさんはビール、6はハイボールで乾杯をして、懐かしい話をしたりこれからのことについて想いをめぐらしたりした。愉しい時間はあっという間に過ぎてしまい、電車の時間が来る。「また逢いましょう」と言って僕らは夏の岡山を後にした。