twitter文芸部のつぶやき

フォロワー募集中!

オフィシャルアカウント

部員のつぶやきはこちら

現在の閲覧者数:

紅茶について 微睡:神崎 裕子

 ティーポットに沸騰したての湯を入れる。ポットが十分に温まると湯を捨てる。ティースプーンにリーフを掬いポットに落とす。高い位置から湯を淹れ十分に空気を含むように、注ぐ。一度リーフが上に溜まって、沈む。リーフがまた浮き上がり、沈む。これを繰り返して、成分が十分に抽出される。事前にミルクを入れておいたカップにその紅茶を注ぐ。そして砂糖を少々加え、スプーンでくるくる。紅茶の香りがはじけて、鼻腔をくすぐった。紅茶と言えば、どのようなイメージがあるだろうか。インドの茶園で女性が茶葉を摘んでいる。あるいは、イギリスの優雅なひと時、それとも、ティーパックに詰められた茶葉か、ペットボトルや、紙パックに詰められたもの。今はその形態を様々に、生活のどこかに。

 日本で飲料として飲まれるのはコーヒーや緑茶が多いがそれは飲みやすく、インスタント製品の製造が比較的容易でありまた、保存がきくため、ペットボトル製品等を作りやすいことがあるだろう。実は紅茶は低温になると渋みが強くなりまた、濁ってしまうため、ペットボトル製品の開発が遅れてしまったのである。しかし現在はKIRINがそれらを改善した製品の開発に成功し、午後の紅茶となった。これは、主に香りの点で不満が残るものであるが、その点ではコーヒーや緑茶も同様であるといえる。そこでやっと同じ土俵に立てたのであるが、紅茶の主な特徴である、香りが殺されてしまっている。やはり、自分で茶葉を購入しそれを飲用する方が紅茶は楽しめるものである。

 さて、紅茶を自宅で淹れる際はどのように淹れることを想像するだろうか。カップにティーカップを置いて、お湯を注ぐのであろうか。あるいは、ティーポットにリーフを置いて湯を注ぐのか。それはどちらにしてもカップやポットを温めてほしい。なぜならば、最も効率的に紅茶の成分が抽出される温度は約95℃以上なので、そのまま沸騰したお湯をカップ等に入れてしまうと約80℃程度まで温度が下がってしまいます。すると、美味しい紅茶は当然のごとくできない。少し、本格的に紅茶を楽しんでみようと、ポットとリーフを購入し、いよいよ初めての抽出を行おう。そんな時に気を付けていただきたいのは、わざわざミネラルウォーターの購入をする必要がないことだ。というのは、紅茶は硬水で淹れるとミネラルが、成分と反応し色も味も薄くなってしまうためである。では、軟水ミネラルウォーターを。と考えるかもしれないが以下に説明する理由のため、実は水道水の方が好ましいのだ。ポットを温めたのち、リーフを入れ、成分の抽出を始めるのだが、やかんから湯を落とす時は高い位置から落とすことが好まれる。なぜならば湯にできるだけ多くの空気を含ませるためである。リーフは多くの空気が含まれる湯の中で、一度空気を纏い浮き上がる。次に水分を吸収し沈む。また、周りの空気を纏い浮き上がる。これを繰り返し効率的に成分を抽出させる。ミネラルウォーターは既に多くの空気が抜けているためこの過程――ジャンピングというのだが――に適さない。水道水は元から多くの空気が含まれているためジャンピングを行うのに適した水で日本ではほとんどが軟水である。ゆえに水道水で紅茶を淹れるのが適しているのである。この段落を要約すると以下のようになる。

  1. カップ、ポットを温めること。
  2. できるだけ空気を多く含むようにすること。
  3. ミネラルウォーターではなく水道水を用いること。

 次にミルクティーの淹れ方を説明しようと思う。ミルクティーを作る際はカップの底にミルクを溜め、そこに紅茶を注ぐのが良いとされる。カップにミルクを入れその中に紅茶を入れる淹れ方をMIF(Milk In First) 、紅茶の後にミルクを入れる淹れ方をMIA(Milk In After)といい、英国王立科学アカデミーの研究結果によりMIFが美味しく紅茶を入れることができると結論づけられている。というのは、熱い紅茶の上にミルクを入れるとミルクのたんぱく質が壊れるためであるからと。また、使用するミルクは低温殺菌の物が良い。ミルクが主張しすぎることがない。一度、同じ条件になるようにMIFMIAを試してみた。MIFは乳脂の感触が紅茶とともに流れた。MIAは乳脂のギトギトした感触がいつまでも残り不快であった。

 最後にチャイを紹介しよう。チャイというのは、主にインドやスリランカで飲まれている紅茶であり、英支配下時代屑茶葉しか手に入らない中どうやって美味しく紅茶を飲むかと考案されたものである。流石赤道付近というべきか、たくさんのスパイスを用い香りづけをしている。ジンジャー、カルダモン、シナモン、ナツメグ、ブラックペッパーなどなど。各家庭でブレンドが異なりそれぞれの味があるという。スパイスとブレンドした茶葉を同量の水とミルクに混ぜ合わせ、大量に砂糖を入れる。そして焦げないように回しながら火をかけ沸騰すれば、カップに移す。別のカップに移し、また元のカップに戻す。これを繰り返し適温になれば完成。スパイスの優しい香りと、砂糖の味がしみわたり、ほっと一息つける。目を閉じて、椅子に身を沈め惰眠を貪るに限ると錯覚する。

 

参考資料

http://www.beverage.co.jp/csr/drink/gogo-himitsu/technology/index.html

http://www.tea-a.gr.jp/pdf/111226.pdf

http://www.tea-a.gr.jp/make_tea/

http://www.verygoodtea.com/teapage/tea/recipe.html

磯淵猛/世界の紅茶 400年の歴史と未来 (朝日新書)