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僕とご飯:神崎 裕子

 ここに一つのお墓があります。そのお墓は白色でした。そのお墓には生き物を殺してはいけないと書いてありました。僕はお墓に花を供えて、祈りを捧げました。僕はまた来ます。と言って家に帰りました。芝と空がとても青くて暑い日でした。

 僕の家ではリンゴを作っています。そのリンゴは血のように赤い色でした。僕がリンゴを食べようとするとお母さんは恐い顔をして怒ります。これは都会の肥った悪魔が食べるものだから食べちゃダメ。と言います。僕は都会の悪魔たちがうらやましいのです。僕のハリガネのような手足なんかよりも肥っていた方がいいと思います。それに昔こっそりと食べたリンゴはとても美味しいリンゴでした。僕の家では、羊を飼って、その乳でチーズを作ります。そのチーズはあまり好きではありませんでした。

 ある日お母さんは僕に本を買ってきました。僕はその本を読まないですぐに本棚にしまいました。僕は、本をあまり読みません。時々枕の代わりに使います。お母さんがいない時に暇つぶしに読むこともありますが、なかなか続かないのです。

 お母さんが本を買ったつぎの日お母さんは、リンゴをたくさん持って都会に行きました。都会の肥った悪魔に売りに行くらしいです。二、三日帰ってこないらしいです。だからその間のご飯は、チーズばかりです。お母さんがいないときは、すぐにご飯に飽きてしまうので嫌いでした。僕はしばらくお留守番をします。お土産を楽しみにしながら、本を開きました。

 

α

 白いお墓は言いました。生き物を殺してはならないと。嘘をついてはならないと。物を盗んではならないと。悪いことをしてはいけないと言いました。続けて白い墓は言います。人にやさしくしなさい。人の不幸に涙できる人間になりなさい。毎日、感謝していきなさい。少年はお墓に尋ねます。どうしてお墓に入っているの。私は死んだからだ。そうか、死んだのか。と思いました。とてもいいことを言っているのに死ぬべきなのか不思議に思いました。少年は尋ねます。どうして、死んだの。私は殺されたのだ。誰かに憎まれてしまったようだ。そうか、殺されたのか。と少年は思いました。それも、そうかもしれないと思いました。豚は死に土にかえりました。

 

 三日経ちましたが、お母さんは帰ってきませんでした。四日目にお母さんが、崖の下で見つかったらしいです。僕は、悲しくなりました。でも、ご飯は食べないといけません。僕は、チーズを食べました。リンゴも食べました。しばらくして僕は、家を出ました。体はハリガネのようでした。都会に向かいます。都会には肥った悪魔がいます。僕は痩せた悪魔になりました。都会の市場で肥った悪魔になります。

〈了〉