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「『Web小説』のこれまで、これからについて考える。」崎本 智(6)

「ウェブで小説を発表すること」―それは『月刊twitter文芸部』の第一回特集にふさわしい内容だとおもう。しかし私にこの問題の何を語ることができるだろうか。

 私はこれまでwebで発表された小説を読んできたことがほとんどない。友人のブログに載っている小説程度だと言える。そう、ずっと「紙の本」によって私の読書はなされてき た。だから、これから語ろうとすることは、web小説の世界をよく知っている人からすれば、とんちんかんなことかもしれない。

 ひとつこの問題について、明確にしておきたいのが「電子書籍化された小説」と「web小説」との区別である。

 「電子書籍」というものがグーテンベルク以来の革命として、近年注目を浴びている。しかしそれはスマートファンやタブレット端末という新しいハードを待たないと注目はやってこなかった。村上龍の電子書籍制作・販売会社「G2010」の設立、それに伴うこれからの小説流通のあり方・印税などにおける作者のビジネスの問題、など付随して語るべきことは幾らでもある。

 対して「web小説」というのは、wikipedia(※1)などを参照するとその起源は80年代のネット上の掲示板から始まったにもかかわらず、世間からの認知・注目の度合いと言うのは、「電子書籍」という輝かしい未来に対して低く、やや古びた不遇のジャンルであるのかもしれない。もちろん「電子書籍」が主には、プロ作家を通して生まれるのに対して、「web小説」の作者はアマチュアの作家だということも関係しているはずだ。

 振り返って考えて見れば、同じ二つの「めくらない小説」の違いは他にもある。「電子書籍」はアプリ(データ)などを購入(=落とす)することによって、読むのに対して、私が今回初めて見た「小説投稿サイト」という「web小説」の発表の場のほとんどがネット上に小説が張り付いている(=上がっている)。そこには「mixi」や「twitter」、「facebook」といった各種SNSと繋がっていて、口コミがそのまま閲覧と言う形でアクセスできる。また多くのサイトにはコメント欄が付されていて、各自が独立して読む「電子書籍」に対して、「議論や批評の場」の形成にもなりえるだろう。しかし、これには一長一短の面があり「炎上」という現象や「なれ合い」という状態を招きかねない。

 そんな「内向きの投稿サイト」に比べて「星空文庫」(※2)というサイトは良いと思った。このサイトは「内向きのコミュニティ化、しきたり化」をできるだけ避けて、交流の場は先に述べた各種SNSを使ってすることを奨励している。よって変な色、悪しき習慣がサイトにはつきにくく、読者はSNSを使って直接作者と相互批評をすることができる。

 いうなれば「発表の場であって交流の場ではないサイト」。そこには、「作品掲載」と「出会い」しかなく「コミュニケーション」は外部に任されているシンプルなつくりだ。

 コミュニケーションは外部の人にも見えた方がいい。もちろん「通りすがりのビンタ」のような言葉を浴びることにもなるだろう。しかし、それはプロになれば幾らでも浴びせられる。ならば、そういった「通りすがりのビンタ」をアマチュアにしてくれるような人々に愛を感じてもいいかもしれない。

 「カラオケ化する文学」と言われて、今や全ての人が発表の場を持てる時代にあることを否定的に見る言説は、これまで幾つもあった。実際にネット上にある「web小説」は稚拙な作品も多々あるだろう(もちろん私もそんな稚拙な書き手だ)。

 しかしそこに、古き良き時代の真剣な批評を目的とする「同人雑誌」的な錬成の場所があり、そこに意欲ある作家志望者/批評家志望者たちが集まれば、その「カラオケ」にも意味はあると信じたい。

 

※1

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E5%B0%8F%E8%AA%AC

※2

http://slib.net/